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TEA LASH II Tactical Throat Microphone Headset

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

TEA

Television Equipment Associates

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット 1969年、米国ニューヨーク州ブリュースターにおいて設立されたTEA(Television Equipment Associates)社は、特殊部隊向け先進タクティカル・ヘッドセットやPTTスイッチ・ユニットをはじめとして、 長年にわたって軍・法執行関係機関、民間セキュリティを対象とした各種タクティカル・コミュニケーション・ツールを開発・製造してきた老舗戦術通信機器メーカーだ。 1980年代初頭、当時最新の声帯振動音声通信技術を用いた世界初のタクティカル・スロートマイク・システムである“LASH(LAPD SWAT Headset)”を設計・開発したことで、同社は一躍有名となった。 “LASH”シリーズは、LAPD(ロサンゼルス市警察)SWATをはじめとした全米の警察SWATチームや米軍特殊部隊など数多くのタクティカル・ユースに採用され、 タクティカル・スロートマイク・システムの代名詞として、後発メーカーの製品開発に大きな影響を与えた。 2000年には新開発のタクティカル・ヘッドセット・システムである“INVISIOインイヤー・ボーン・コンダクション・ヘッドセット”の提供を開始した。 これは同社が独自に特許を取得した外耳道に装着するインイヤー式の骨伝導マイクロフォン・システムであり、 この革新的なタクティカル・ヘッドセット・システムは、従来のスロート・マイク・システムに代わり、米国内の警察SWATチームをはじめとしたタクティカル・ユースに瞬く間に普及した。 その後も同社は、米海軍や海兵隊などで使用される特殊部隊向け高性能タクティカル・ヘッドセットとPTTオプション・システムの開発をはじめとして、 米軍が主導する各種の歩兵用通信機器プロジェクトに積極参入し、米軍の歩兵用通信機器開発において密接な関係を築いている。

今日、TEA社は米国を代表する戦術通信機器メーカーのパイオニアとして、多種多様なタクティカル・コミュニケーション・ヘッドセットとPTTオプションをラインアップしている。 同社は、法執行関係機関などの公安組織や軍隊で使用される殆ど全ての無線機(デュアルないしマルチトーク・グループ・ラジオを含む)や携帯型情報端末(ラップトップ・コンピューター、タブレット、スマート・フォン)、 車両、船舶、航空機(固定翼機及び回転翼機)に搭載されるオンボード・インターコム・システムなどに対応するよう自社の製品をカスタマイズする技術的能力を有している。 同社は国際的な品質管理基準である“ISO 9001:2008”を取得し、厳格な品質管理と顧客対応で幅広い顧客のニーズに応え、 同社の製品はその信頼性の高さから米軍やFBIをはじめとした連邦政府機関、各地の警察SWATチーム、各国の軍・警察特殊部隊など数多くのタクティカル・ユースに採用されている。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

TEA LASH II Tactical Throat Microphone Headset

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

TEA社製の“LASH II Tactical Throat Microphone Headset”は、声帯振動音声通信技術を用いた世界初の実用的なタクティカル・スロート・マイク・ヘッドセットである“LASH I Tactical Throat Microphone Headset”の改良モデルである。 スロート・マイク・システムは、特殊なマイク・ユニットを首元の声帯部分に装着し、会話時に声帯から発せられる声帯振動を直接電気信号に変換する音声通信技術だ。 スロート・マイク・システムの原型は第二次世界大戦中には存在し、爆撃機など航空機用エンジンの雑音環境下において、パイロットが送る無線通信の音声品質を確保することを目的として開発された。 従来の標準的なヘッドセットで用いられてきた露出型ブーム・マイク・システムは、口から発せられた音声を空気伝導(気導音)を通じた後、これをマイクで受信して電気信号に変換していた。 このため、航空機内や戦場など周囲の雑音が著しい使用環境では、これらの雑音までマイクが集音してしまい音声品質が低下する問題があった(これらの問題は後に高性能指向性マイク技術や電子的なノイズ・キャンセリング技術の発達で大きなデメリットとはならなくなった)。 これに対し、声帯振動を空気伝導を介さず、直接電気信号に変換するスロート・マイク・システムは、爆発音など大きな雑音が生じる環境で活動するタクティカル・ユースに適していた。 また、特殊部隊に必須であるレスピレーター(ガスマスク)を装面した際、面体越しに装着する従来のブーム・マイク・システムでは、面体越しのこもった音声を受信していたのに対し、 首元に装着するスロート・マイク・システムは、レスピレーターを運用するガス・オペレーションにおいても音声品質が低下することがない。 TEA社が創設されて間もない1980年代前半、同社は米国警察SWAT(Special Weapons And Tactics:特殊火器戦術)チームの始祖として勇名を馳せるLAPD(Los Angeles Police Department:ロサンゼルス市警察)SWATチームからの依頼を受け、 近接戦闘を専門とするSWATチームでの運用に適したタクティカル・ヘッドセットの開発を行った。 現役SWAT隊員からの実戦的な意見を集約し、 当時特殊部隊向けタクティカル・ヘッドセットとして世界で初めてスロート・マイク・システムを応用して誕生したのが“LAPD SWAT”の名を冠した“LASH(LAPD SWAT Headset)”である。 “LASH”シリーズは、全米の警察SWATチームの先駆者であるLAPD SWATチームで運用が開始され、その運用性の高さが評価され、 1990年代前半から2000年代前半にかけて全米の警察SWATチームをはじめ、米軍特殊部隊など数多くのタクティカル・ユースに採用された。 タクティカル・スロート・マイク・ヘッドセットの完成形として広く普及した“LASH”シリーズは、TCI(Tactical Command Industries)社など後発の戦術通信機器メーカーの製品開発にも大きな影響を与え、 “LASH”シリーズのデザインに倣った類似製品が多数登場した。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲“LASH II”を装着した2000年代前半のLAPD(ロサンゼルス市警察)SWATチーム所属のポリス・オフィサー。 米国の大手防弾装具メーカーであるPoint Blank(ポイント・ブランク)社製のMRV(モジュラー・レスポンス・ベスト)を着用し、 背面に装着したラジオ・ポーチによってMOTOROLA(モトローラ)社製のデジタル無線機であるASTRO SABER(アストロ・セーバー)IIIを携行している。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲声帯部分に接する2箇所の円筒形スロート・マイクロフォン・モジュールによって声帯振動を受信し、これを電気信号に変換して無線機へ送信する。 空気伝導を介さないため、雑音の著しい運用環境でも音声品質を損なわないのが大きな特徴だ。 また、外部の無線機から受信した音声情報はスピーカー・モジュールに接続されたサウンド・チューブとイヤー・モールドを通じて、装着者へ伝達する。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲首元に装着するスロート・マイク・システムは、通常の頭部装着型のブーム・マイク式ヘッドセットに比べ、頭部及び顔面が完全に開放され、バリスティック・ヘルメットやレスピレーターなど特殊部隊に必須である各種ヘッドウェアの装着を妨げないのが特徴だ。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲スロート・マイクロフォン・モジュールを支えるプラスチック・アッセンブリーは着用者に合わせて角度が可変する構造だ。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲声帯部分に位置するスロート・マイクロフォン・モジュールは、着脱式のエラスティック・ストラップによって保持される。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲着脱方法はロック機構などのない引っ掛け式のシンプルな構造で、一人でも迅速かつ確実な着脱が容易だ。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲システム全体の構成品。ヘッドセットと無線機を接続するコネクター形状などのインターフェースは、無線機のメーカーや機種によって異なるため、 運用する無線機に合わせて適宜選択する必要がある。なお、本品は米国の法執行関係機関で採用率の高いMOTOROLA(モトローラ)社製XTSシリーズのインターフェースに対応している。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲エラスティック・ストラップは着用者の首周りに合わせて長さを微調整することが可能だ。 声帯振動を利用したスロート・マイク・システムは、周囲の雑音が著しい環境においても確実な音声伝送を実現し、囁き声のような小さな声もクリアに伝送することができる。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲システムの中核である高性能スロート・マイクロフォン・モジュール。 片方のモジュールにはスピーカー・システムも内蔵され、透明のコイル状サウンド・チューブを介し、外部の無線機から出力された受信音声を装着者に伝達する。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲スロート・マイクロフォン・モジュールは、英国陸軍などにも製品納入実績のあった英国の大手電子機器メーカーRacal Acoustics社製だ。 なお、同社は2008年12月に米国の防衛産業大手であるEsterline Technologies社に買収され、通信機器部門の一部となった。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲付属のコイル状サウンド・チューブ及びイヤーモールド。 イヤーモールドを外耳に装着することで、スロート・マイクロフォン・モジュールに内蔵されたスピーカーからの音声情報を伝達する。 サウンド・チューブとイヤーモールドは、分離することが可能だ。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲ヘッドセットとラジオ・コネクターを結ぶ通信ケーブルの中間にある“D型”PTTスイッチ・ユニット。ヘッドセットとPTTスイッチ・ユニットはストレート接続の一体式で、分離することはでない。 直径2インチの特徴的な円筒形デザインを有するD型スイッチは、大型のPTTスイッチを備え、厚手のグローブなどを着用していも確実な送話が可能だ。 また、PTTスイッチは外周にある肉厚のプロテクション・リングによって保護され、銃のスリングなど装身具の接触による誤送信を防止するよう配慮されている。 このラウンドタイプPTTスイッチ・ユニットは、その機能性の高さとシンプルなデザインによる秀逸さから後発の戦術通信機器メーカーにも多数模倣された。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲PTTスイッチ・ユニットの側面には、遠隔操作用のスナイパーPTTスイッチ・ユニットを接続するためのインターフェースが設けられている。 また、背面には面ファスナーのオス側が接着されており、メス側を備えるボディー・アーマーやタクティカル・ベストなどに直接固定することができる。 背面にメス側が備えられた付属のアリゲーター・クリップを接着すれば、装着の自由度はさらに広がる。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲リップ先端内側にラバー・グリップが設けられたステンレス製で堅牢な大型アリゲーター・クリップを装着することで、 ボディー・アーマーやタクティカル・ベストなどのに装身具にPTTスイッチ・ユニットを強固に装着することができる。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲購入時の付属品一式。ナイロン製の収納用ポーチ内にはヘッドセット及びPTTスイッチ・ユニット・アッセンブリーに加え、 PTTスイッチ・ユニットをタクティカル・ベストなどに固定するためのアリゲーター・クリップ、予備のイヤーホック、説明書が付属する。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲付属の金属製スペアー・イヤーホック。サウンド・チューブに接続されている標準のイヤーモールドと容易に換装することができる。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲付属のメンテナンス・データが記載された説明書の一部。修理依頼や予備部品の発注用に部品名称が詳細に記載されている。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲堅牢なナイロン製のジッパー開閉式ヘッドセット収納用ポーチは、米国の老舗デューティー・ギア・メーカーであるアンクルマイクス社製だ。 背面にはベルトループが設けられており、ポーチをデューティー・ベルトなどに固定することができる。

TEA LASH II タクティカル・スロート・マイクロフォン・ヘッドセット

▲“LASH II”を装着した警察特殊部隊所属のオペレーター。“LASH II”は米国の警察SWATチームや米軍特殊部隊のほか、各国の軍・準軍事組織所属の対テロ特殊部隊においても広く採用された。 また、“LASH II”の設計に強い影響を受けた類似製品も多数生産されている。