被弾による死傷率の高いCQBオペレーションを専門とした警察SWATや対テロ部隊は、
軍隊などの野戦部隊に比べて特に抗弾装具の充実に重きを置く傾向にある。
このなかでボディーアーマーに次いで中核を成す抗弾装具がバリスティックヘルメットだ。
現在のモデルのベースとなった実用的な軍用バリスティックヘルメットは、1980年代の米軍においてPASGT
(地上部隊個人防護システム)ボディーアーマーとセットで支給が開始されたPASGTヘルメットである。
PASGTヘルメットは従来のスチールやジュラルミンなどの合金素材を用いたヘルメットとは異なり、当時最新の
高分子アラミド繊維(デュポン社製ケブラー)を樹脂で固形化(レジン加工)した成型素材を利用している。
このレジン加工を施した帽体に弾丸が命中した際、命中部分が局所的に崩壊することによって弾丸の運動エネルギーを吸収・伝搬し、弾丸の貫徹を阻止する。
採用当時はPASGTボディーアーマーの運用コンセプトと同じく、榴弾などに対するフラグメンテーション・プロテクティブ(破片防御)の
意味合いが大きく、低初速の拳銃弾程度の貫徹は防げるが高エネルギーをもつ高初速ライフル弾への抗弾能力は殆ど期待できなかった。
当初、米国の警察SWATなどでは米軍規格準拠のPASGTタイプヘルメットを採用することが多かったが、
CQBオペレーションの重要性が増した1990年代以降は、成型技術や抗弾素材の進化に伴い軽量化や抗弾性能の
向上を図った特殊部隊向けのバリスティックヘルメットが関連メーカーによって開発・製造されるようになった。
2000年代以降、米軍においても従来のPASGTヘルメットに続き、軽量化や抗弾性能の向上、シェルデザインやサスペンションシステムの改良によって、
各種コミュニケーションツールとの併用に優れるMICH(Moduler Integrated Communications Helmet)
やACH(Advanced Combat Helmet)といった次世代の軍用バリスティックヘルメットを世界に先駆けて開発・配備している。
対テロ部隊ではボディーアーマーと同じく、一定の抗弾性能と信頼に足る製造品質をクリアしたモデルを採用する必要がある。
CQBオペレーションにおいて装備する場合、具体的には米国司法省が定めるNIJ規格であれば最低でもレベルIIIA以上をクリアした
モデルで、可能ならば各国のタクティカルユースで一定の採用実績のある製造メーカーブランド
(世界的なブランドロイヤルティーとしてはLBAやMSAなどが代表的)を選ぶべきだ。
また、バリスティックヘルメットのオプションアクセサリーとして、バイザータイプのフェイスシールドも存在する。
バリスティックヘルメット対応のフェイスシールドには、一定の抗弾能力のあるバリスティックモデルと
抗弾能力のないライオットモデルの2種類があり、3mm〜5mm厚程度の耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂で
形成されるライオットモデルは、主に暴動鎮圧作戦などにおいて飛来する投擲物から顔面を保護するのが役割である。
一方、欧州の対テロ部隊や日本の警察部隊などで好まれる傾向にあるバリスティックフェイスシールドは、
粘弾性の高いポリカーボネート樹脂に加えて、性質の異なるアクリル有機ガラスを20mm〜30mm厚程度に
積層加工することで、飛来する弾丸に対して一定の抗弾能力をもつ。
顔面への被弾のリスク(基本的にヘルメットと同様に高初速ライフル弾は防げない)を極力低減するアドバンテージが
得られるが、殆どのモデルはヘルメットと同程度の重量があるため、重量増加や体積増に伴う機動性の
低下が生じるデメリットも付帯する。
このほか、警察SWATや対テロ部隊ではバリスティックヘルメットとは異なり、一切の抗弾能力のないクラッシュヘルメットが用いられる場合もある。
クラッシュヘルメットは軽量なプラスチック樹脂などで成型され、元来アイススポーツや各種アウトドアスポーツなど
のスポーツシーンにおいて頭部への耐衝撃緩和を目的に被られているヘルメットで、米国のPRO-TEC(プロテック)ブランドの
モデルなどが昔から有名だ。
一切の抗弾能力が期待できないクラッシュヘルメットだが、バリスティックヘルメットに比べて格段に
軽量で通気性や排水性にも優れるため、高機動性を優先しつつ閉所空間における最低限の頭部保護を
求める船舶臨検部隊、ロープ降下や空挺降下を伴う特殊作戦部隊などに採用されている。
また、例えば警察系特殊部隊の遭遇することの多い刃物で武装した犯人を生きたまま確保する場合など、
あえて抗弾装具を装備する必要がなくCQC(近接格闘)を前提とした状況でもクラッシュヘルメットは重宝されており、
実際に日本においても警察のSAT(特殊急襲部隊)狙撃部隊やSIT(特殊捜査班)突入班、海上保安庁のSST(特殊警備隊)、
海上自衛隊のSBU(特別警備隊)など、殆どの特殊部隊でクラッシュヘルメットは多用されている。
無論、バリスティックヘルメットでも抗弾能力だけでなく十分な耐衝撃緩和能力は発揮できるが、硬質樹脂という
成型素材の性質から、壁や天井など(特に金属などの硬物)に帽体がぶつかると、クラッシュヘルメットに比較して
石をぶつけたような大きな音が生じるため、隠密行動が原則のステルスエントリーには一定のリスクが伴う。
ヘルメットはCQBオペレーションにおいて、ボディーアーマーに並び、着用者の生命中枢を防護する基本的かつ重要なパーソナルプロテクティブギアのひとつだ。
しかし、その運用には前述の特性も付帯することから、敵の攻撃能力や活動環境をはじめとした相対状況に応じて、バリスティックヘルメットやクラッシュヘルメットを適宜使い分け、
さらに高機動性や隠密性を優先する場合などは、その妨げとなるヘルメット自体を着用しないことも想定すべきである。

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■ MSA Advanced Combat Helmet TC 2000
― MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000 |
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■ GENTEX Law Enforce Helmet
― ジェンテックス ロウ エンフォース ヘルメット |
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■ SPP Infantry Combat Helmet 1st Model
― SPP インファントリー コンバット ヘルメット 初期型 |
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■ SPP Infantry Combat Helmet 2nd Model
― SPP インファントリー コンバット ヘルメット 後期型 |
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■ PROTECH Delta 3 Ballistic Helmet
― プロテック デルタ 3 バリスティック ヘルメット |
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■ PROTECH Delta 4 Ballistic Helmet
― プロテック デルタ 4 バリスティック ヘルメット |
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■ ABA (American Body Armor) TAC-200R Ballistic Helmet
― アメリカン ボディー アーマー TAC-200R バリスティック ヘルメット |
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■ ABA (American Body Armor)TAC-100R Ballistic Face Mask
― アメリカン ボディー アーマー TAC-100R バリスティック フェイス マスク |
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■ FPC (Fortress Pacific Corporation)Ballistic Face Mask(3/4 Face Size)
― FPC バリスティック フェイス マスク(3/4 フェイス・サイズ) |
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■ PAULSON MODEL FF-6 Riot Face Shield
― ポールソン モデル FF-6 ライオット フェイス シールド |
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■ RABINTEX RBH 303S Ballistic Helmet with Ballistic Face Shield
― ラビンテックス RBH 303S バリスティック ヘルメット / バリスティック フェイス シールド |
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