平成21年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設59周年記念行事 -装備展示編その2-

2009年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設59周年記念行

▲こっこれは…もはや文化祭のノリですね…。いやなんか半長靴とか嫌いじゃないです。。

戦闘防弾チョッキ2型(改)

▲火器や車両・航空機などの展示を一通り網羅した我々一行は展示スペースのグランドを抜けたところで、 出口付近で展示していた個人装具の試着体験ブースを発見。タクティカルギア好きの会長には 素通りするわけにはいかず、早速ヤマと一緒に試着してみました。

戦闘防弾チョッキ2型(改)イラク派遣仕様

Tactical Body Armor gen 2 kai / Iraq version

戦闘防弾チョッキ2型(改)

▲ヤマに着てもらったこれは既存モデルの戦闘防弾チョッキに改良を施した派生モデルである戦闘防弾 チョッキ2型(改)。戦闘防弾チョッキは1992年に自衛隊で本格的に導入が開始された個人防御用ボディ ーアーマーで、1980年代初期にアメリカ陸軍が導入を開始したIIFS(統合歩兵戦闘装備)の構成装備の 一種であるPASGT(歩兵用個人防御システム)ボディーアーマーを参考に開発されました。 PASGTを含め当時の軍用ボディーアーマーは防弾素材であるケブラー繊維の性能上、拳銃弾程度の直撃弾 は防げても現代軍用小火器の主力であるアサルトライフルの高初速弾の貫徹を防ぐことはできませんでした。 警察などの法執行機関やセキュリティ向けのボディーアーマーとしては犯罪者の多くが拳銃程度の軽武装である ため、拳銃弾からの防御が可能というのは大変有効でしたが、先述のとおり軍用ボディーアーマーは性能限界上、 戦場を飛び交う高初速・高エネルギーのライフル弾を防ぐことはできず、基本的にはベトナム戦争当時のボディ ーアーマーの運用コンセプトと同じく榴弾や跳弾から身を守るフラグメンテーション・プロテクティグ・ベスト (破片防御ベスト)としての役割が主でした。当然のことながら米軍のPASGTに出遅れた陸自の戦闘防弾チョッキ もこれに準じた性能を有していました。ところが近年、米軍主導の中東での軍事作戦における市街地戦闘では敵対 勢力が元来の砲爆撃などではなく、カラシニコフ・ライフルを始めとした軍用ライフルを主な攻撃手段としており、 ライフル弾の直撃被弾による死傷者数が増大。これに伴いアメリカ陸軍では新たにライフル弾に対して抗弾能力 を有する硬質ファイン・セラミックス製のセラミック・プレート(SAPI)を追加挿入可能なインターセプター・ ボディアーマー(IBA)を開発・配備。その後も同様のセラミック・プレート等のハードアーマーを装備可能な更新モデルを続々と開発 していきます。旧態依然として伝統的な野戦に準じ既存の戦闘防弾チョッキ(ソフトアーマー)を装備していた自衛隊ですが、 2003年のイラク派遣に伴いようやく先進各国の趨勢に従ったセラミック・プレートを装備可能な戦闘防弾 チョッキ2型を開発配備するに至りました。

戦闘防弾チョッキ2型(改)

▲セラミック・プレートの装備以上に表向きに目立つ大幅な改良はベスト前面と背面下部に装備された このウェビング・テープ。戦闘防弾チョッキ2型の開発の参考にされたとされる米軍のインターセプター・ボディーアーマー(IBA) には次世代のタクティカル・ロードベアリング・ギアとしてMOLLE:モーリー(MOdular Lightweight Load-carrying Equipment) システムが標準装備され、1インチ(約2.54cm)幅の高強度の耐久性ナイロン・ストラップから成る PALS (Pouch Attachment Ladder System)ウェビングを利用した新世代のロード・ベアリング・システムとして、 戦闘行為に従事する兵士への負担を最小限に止めながら、近年多様化する各種戦闘装備の自由で効率的な 個人携行を可能としました。 2型に装備されたウェビング・テープも見たところ基本的にこのPALSに準拠した 規格のようで、官給の専用ポーチのほかにもBHI(ブックホーク社)などの大手タクティカルギアメーカーの各種ポーチも取り付け できそうです。また、イラク派遣の際に米軍との誤認による攻撃を避けるために自衛隊が徹底した「僕たち日本だから アメリカと間違って攻撃しないでね作戦」の一環である日の丸アピールのため、ベストの前面と背面には日章旗のフラッグ パッチを装着するためのベルクロテープが装備されています。

戦闘防弾チョッキ2型(改)

▲ベスト内側のカバーに添付されていた納品ラベル。納品業者は従来のケブラーを凌ぎ防弾ベストの新素材として注目 される軽量高強度繊維“ザイロン”を開発したことでも有名な日本の繊維・バイオ・医薬製品などを扱う巨大企業 である東洋紡績です。インナーのソフトアーマーに耐弾性ファイバーであるザイロンを使用しているかは不明。 ただザイロンは防弾素材としては劣化が比較的早いのが問題視され、米国でも訴訟を起こされ今後の防弾素材 としての展望は未知数。 正式には公表されていませんが、一着当たりの納入価格は10万円前後とのこと。まぁ異常価格の国産小火器 に比べ、この手の防弾装具としては世界的にも妥当な価格帯です。取扱注意事項の洗濯要領などは中々興味深いですね。

戦闘防弾チョッキ2型(改)

▲こちらはオプションのハードアーマーであるセラミック・プレートを挿入するため、前面に加え背面にも装備されたプレートポケット を開いたところ。脆性が高い一方で靭性に優れた硬質のセラミック・プレートが音速の3倍近い高初速で飛翔する 高エネルギーのライフル弾が直撃した際に、着弾部のプレート面体が局所的に崩壊することで弾丸の運動エネルギー を吸収・緩衝し、さらにベスト本体のケブラーやスペクトラなどの軟質繊維がプレート崩壊に伴う余剰エネルギーを 最終的に伝搬・吸収することで弾丸の貫徹を阻止、着用者へのダメージを最小限に抑えます。 ただし、このようにライフル弾に対して有効な抗弾能力を有するセラミック・プレートですが、酸化系高純度の 無機原料を焼き固めたファイン・セラミックであるため、一般に重量は一枚当たり2〜4kg程度(基本的に抗弾能力 の高さに比例して重量が増加する)あり、個人装備の重量増加に比例して機動性が失われるため、通常は脅威対象 の如何に応じて追加装甲挿入の是非を判断します。そのため通常の任務ではプレートは挿入せず、イラク派遣や 市街地戦闘のようにライフル弾での被弾が考慮される状況でハードアーマーの併用がされることが多いようです。

戦闘背のう一般用(1形)

Tactical backpack type 1

戦闘背のう一般用(1形)

▲続いてこちらは戦闘背のう。いわゆるバックパックです。極短期的な急襲作戦を主要任務 とする警察SWATや対テロ部隊では殆ど馴染みが薄く、長期作戦の多い軍隊ならではの装備です。 数日の野営に必要な戦闘装備以外の各種装備を収納・携行可能。当然のことながらデカサだけ でなく重量も結構なもので、小銃を携え防弾ヘルメットや防弾チョッキまで着たうえ、 これを担いで急峻な山中を行軍する自衛官の方々には完全に脱帽です。

2009年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設59周年記念行

▲個人装備の展示も一通り見終わり、強烈な日差しによる日焼けに加え日中ずっと立ちっぱなしで、足腰もキツくなってきました。 最後のとりとして高機動車と73式新小型トラックの体験試乗に挑むことに。 というか列に並ぶ8割近くは親子連れなのでちょっと勇気はいりますが、一応日本国民として税金は払っているので 堂々と順番を待ちます。

2009年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設59周年記念行

▲そして列に並ぶこと約5分で試乗の順番がやってきました。乗ったのは73式よりデカイ高機動車。 米軍のハマーに酷似しているため、和製ハマーとも揶揄される高機動車は元々はトヨタ製のメガクルーザーで、 ハンドル中央にもしっかりトヨタのロゴマークが見えます。

2009年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設59周年記念行

▲ある意味オープンカーに乗って新春の風に煽られながら駐屯地内を周回。整地上での乗り心地は思ったより上々で、 あっという間に1週して3分程度で降車地点に到着しました。

2009年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設59周年記念行

▲体験試乗も楽しみ、閉門の15時が近づいてきたのでそろそろ撤退。いやぁ満足満足。

2009年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設59周年記念行

▲駐屯地正門を出て再び駐車場まで15分程度歩き、疲労度はMAXに。マジ疲れました。

2009年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設59周年記念行

▲再び高速に乗って帰路につきます。来年まで高速上限一律1,000円政策は続くようなので、 来年もまた来たいと思います。来年はもっと早く来て椅子付きの席を確保せねば…。

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▲帰りに柏崎の米山SAで遅れた昼食をとりました。これにて本日の全日程、状況終了!

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