▲79式対舟艇対戦車誘導弾(重MAT)の発射機を積載した旧73式小型トラック。重MATは和製TOWとも言える純国産の有線誘導方式第2世代多目的ミサイルで、 対戦車攻撃能力のほか、上陸舟艇等に対する攻撃能力も有します。最大有効射程は約4,000mですが、車載状態からの発射はできず、地上に設置する必要があります。
▲ここ数年で全国の普通科部隊及び機甲科偵察部隊等への配備が急速に進み、旧来のジープに替わる“自衛隊の足”としてすっかりお馴染みになった軽装甲機動車(LAV)。 自衛隊が駐屯する地域では、普通に街中で目にする機会も多くなりました。民生品を多用することで調達コストを抑え、調達価格は3,000万円前後です。
▲機体展示のため、グラウンドにUH-1J多用途ヘリコプターが飛来してきました。
▲空を飛んでいると目立つ迷彩塗装ですが、木々がバックだとその効果が分かります。
▲UH-1Jが着陸した後、続いてAH-1S対戦車ヘリコプターが飛来。
▲UH-1Jの隣に着陸。
▲続いて2機目のAH-1Sもやってきました。
▲無事着陸。
▲やっぱりコブラはカッコイですね〜。
▲コブラのスタブウィングにはTOW対戦車ミサイルの発射筒が懸架されています。
▲最後にOH-6D観測ヘリコプターがやってきました。
▲一番奥に着陸します。
▲陸自の主要ヘリが集結。日常の光景にこれだけ軍用ヘリが集まると壮観です。
▲地上展示のための準備が行われます。
▲タンデム配置のコックピットが特徴的なAH-1S。後席がパイロットで前席がガンナーです。
▲火器展示のための準備も急ピッチで行われます。
▲110mm個人携帯対戦車弾(LAM)を携行する隊員。
▲91式携帯地対空誘導弾(スティンガー型の訓練用ダミー)と84mm無反動砲。
▲こちらは小火器。左から5.56mm機関銃(MINIMI)、89式5.56mm小銃、対人狙撃銃(M24 SWS)。
▲火器展示ブースの設営もほぼ完了。
▲今回の遠征の目玉は左の対人狙撃銃(M24 SWS)。
▲過去2回の高田駐屯地記念行事の火器展示では、一度もお目にかかれませんでした。
▲陸上自衛隊では平成14年度から対人狙撃銃の名称で米国の主要銃器メーカーであるレミントン・アームズ社製のボルトアクション・スナイパーライフル M24 SWS(Sniper Weapon System)をFMS(対外有償軍事援助)で導入しています。 従来、陸上自衛隊では64式7.62mm小銃に専用の照準眼鏡(スコープ)を装着して簡易的な狙撃銃として運用してきましたが、64式7.62mm小銃の減数や2000年代以降に重視 されるようになった対テロ・対ゲリラコマンド作戦における本格的な狙撃任務には適さなくなったため、本銃が選定導入されました。 調達価格は対人狙撃銃本体や照準眼鏡、二脚(バイボッド)、運用に必要なメンテナンス・クリーニングキット、ペリカン製の大型ハードガンケースなど 狙撃任務に必要な周辺パーツがセットになって約60万円となっています。
▲陸上自衛隊には対人狙撃銃に導入に伴って、全国の普通科連隊に定員6名から成る狙撃班が創設されました。狙撃班は諸外国の軍・警察所属のスナイパーユニットと同じく、 射手(スナイパー)と観測手(スポッター)の2人1組で構成され、状況に応じてギリースーツを含む隠密行動用戦闘装着セットを装着して擬装します。 観測手は射距離や風速等の環境観測を行い、狙撃手に対して狙撃に必要な情報を与え、目標や弾着の観測、戦果確認、狙撃手の援護・護衛など狙撃手をサポートするため、 多種多様な任務を兼務し、状況によっては観測手が狙撃を行う場合もあります。
▲対人狙撃銃として導入されたM24 SWS(Sniper Weapon System)は、米国の名門銃器メーカーであるレミントン・アームズ社が開発した傑作ボルトアクション ライフルであるM700シリーズをベースに軍・警察向けに各所に改良を施し、狙撃システムとして狙撃に必要な資機材を銃本体と共にパーケージ化したものです。 7.62x51mm NATOライフルカートリッジに準拠し、銃本体の固定式弾倉に5発を保持できます。
▲M24 SWSの最大有効射程は最適環境下で800m程度とされており、実際に富士総合火力演習では狙撃班が射距離500mで車両に乗車した人像標的の頭部を実弾で 撃ち抜くヘッドショットを実施しています。
▲前方下部に装着された折り畳み式の二脚(バイボッド)は米国のハリス社製で、脚は伸縮式のため高さの微調整が可能です。
▲スコープには夜間用のナイトスコープもあるようです。
▲銃本体の左側面にはモデルネームとシリアルナンバーの刻印が施されています。
▲スコープの対物レンズと接眼レンズには、バトラークリーク社製のスコープカバーが装着されいます。
▲命中精度向上のため、銃身とフレームが接触しないフローティングバレルとなっています。
▲スコープは米国の名門ライフルスコープメーカーであるリューポルド社製のMark 4 LR/T 10x40mm (30mm) M3モデルを搭載しています。 40mmの対物レンズを有し、倍率は10倍固定です。高品質で定評の高いリューポルドのライフルスコープはプロ仕様の高級モデルが多く、 このスコープだけでも日本では20万円近くします。
▲接眼レンズに装着されたバトラークリーク社製のフリップオープン・スコープカバーは、赤色のボタンを押すことで素早くカバーを開くことができます。
▲とりあえず、触り放題だったのでボルトを引いてみます。
▲ボルトアクションは非常にスムーズに行えます。
▲薬室内が見えている状態。
▲これがセーフティーレバー。銃把を把持したまま右手親指で操作できます。「S」がセーフ、「F」がファイアー。
▲複合材料等のシンセティック素材の銃床はHSプレシジョン社製です。ショルダーストックパッド部分は、射手の体格に合わせて長さの微調整ができます。
▲7.62mm口径が小さく見えるほどの肉厚のあるマズルフェイス。銃身先端の上面にはレッドフィールド社製の競技用照準器(ピープサイト)用のベースが装着されています。
▲続いて歩兵の顔である89式5.56mm小銃の展示ゾーンへ。
▲二脚を装備した状態。弾倉は外されています。もはや詳しい説明は不要ですね。
▲小火器から対戦車火器のゾーンへ移動。こちらは110mm個人携帯対戦車弾。 “Light-weight Anti-tank Munition”の頭文字をなぞってLAMの略称で呼ばれています。 元々はドイツ連邦軍が1990年代初頭に制式採用した無誘導のロケット噴進弾を肩撃ちで発射する軽便な対戦車火器で愛称は“パンツァーファウスト3”、 さしずめ西側版のRPG-7といったところでしょうか。後述の汎用性の利くカールグスタフとは異なり、照準器以外の発射筒は一回ポッキリの使い捨て式で、 セットされている弾種も対戦車榴弾のみと運用的には装甲目標を相手にした純粋な対戦車火器という存在です。 有効射程は固定目標で約400m、移動目標に対しては約300m。
▲前方の2つのフォアグリップと後方のショルダーストックは全て折り畳みが可能な構造となっています。
▲本体チューブ側面には簡略式の取扱い説明図が記載されています。
▲個人携行が可能な最大の火力のひとつである84mm無反動砲カールグスタフM2またの名を “カール君”。 元々は60年以上前に北欧スウェーデンにて開発された個人運用可能な肩撃ち式の携行無反動砲で、 後に軽量化などの改良が施され現在では米軍をはじめとしてNATO加盟各国にて制式採用されている軽量火砲の傑作モデルのひとつです。 自衛隊では1979年から輸入を開始し、後に89式小銃などの製造を請け負う豊和工業がライセンス生産を行い現在でも陸自の普通科や施設科などに現行装備されています。 カールグスタフは他の多くの使い捨て携行対戦車火器と異なり、発射筒自体は何度でも使い回せるため任務の用途に応じて様々な弾種を使い分けることが可能なのが特徴のひとつです。 自衛隊では榴弾・対戦車榴弾・照明弾・発煙弾の4種類を運用しており、本来の対戦車任務に限らず多目的な運用が可能となっています。 ちなみに榴弾を射出した場合の有効射程は約1,000m。調達価格は約1,000万円。自衛隊では平成24年度からカールグスタフM2の改良モデル(複合材料等の採用による軽量化) であるカールグスタフM3を84mm無反動砲(B)として制式採用しています。
▲携行式といっても要は鋼鉄の筒で本体重量は約16kgもあるため、実際に肩に担ぐと本当に重いこと。 戦闘装着セットを着たうえに、こいつを担いで急峻な山中を延々と行軍するなんて考えただけでも 恐ろしいです(汗)。
▲続いて対空火器。91式携帯地対空誘導弾(SAM-2 / 携SAM)、通称「ハンドアロー」です。
▲これが91式携帯地対空誘導弾です…と言いたいところですが、よく見るとなんか違う。「節子、それ91式ちゃう。スティンガーや!!」…ということで、 実際に展示されていたのは91式携帯地対空誘導弾が採用される前に自衛隊で導入されていた米国製のFIM-92スティンガーミサイルの訓練用ダミーでした。
▲91式携帯地対空誘導弾は、我が国が開発した国産初の第4世代MANPADS(Man-portable air-defense systems:携帯式地対空ミサイルシステム)で、 1980年代に導入された米国製スティンガーミサイルの後継機種として1991年に制式採用されました。 従来のスティンガーミサイルが敵航空機ジェットエンジンの排熱などから発せられる赤外線を認識して追尾する赤外線パッシブ誘導方式のみを採用していたのに対し、 91式はこの赤外線パッシブ誘導方式に加えて、高性能CCDカメラによる画像認識誘導方式の2種類のミサイル誘導方式を採用しています。 目標を可視光で認識する画像認識誘導方式は、目標正面からの攻撃に加え、赤外線低排出目標や赤外線誘導ミサイルへの欺瞞対抗策として用いられることの多い フレアなどのアクティブ・デコイ妨害装置に強い特性をもち、反対に赤外線誘導方式は熱源の発する赤外線を追尾するため、 画像認識誘導方式が可視光で目標を認識しにくい霧や雲越しでの追尾に強い特性をもっています。 91式はこの2種類の誘導方式を併せ持つことで、スティンガーミサイルに比べて様々な状況下における目標対処の柔軟性が大幅に向上しました。 91式のミサイルユニットは、拠点防空用に8連装発射機を装備した93式近距離地対空誘導弾(SAM-3 / 近SAM)やOH-1観測ヘリコプターのスタブウィングに装備されている 自衛用ミサイルとしても流用さています。ちなみに有効射程はスティンガーミサイルと同程度の約5,000m、ミサイル本体は東芝が製造しています。
▲パッと見は91式携帯地対空誘導弾とステインガーの区別は難しいのですが、発射筒前方上部の折り畳み式のIFF(敵見方識別装置)アンテナにスノコ状に複数施された 長方形のくり貫き穴が91式は2列、スティンガーは画像のように1列となっているのが一番分かりやすい違いです。
▲続いて普通科連隊における対戦車火力の中核である87式対戦車誘導弾(中MAT)、通称「タンクバスター」。
▲この87式対戦車誘導弾は、64式対戦車誘導弾(MAT)の後継機種として開発された国産の対戦車ミサイルです。戦後第1世代の対戦車ミサイルである64式対戦車誘導弾が 有線の手動操作によるMCLOS(Manual Command to Line Of Sight:手動指令照準線一致)誘導方式を採用していたのに対し、87式対戦車誘導弾は現代の対戦車ミサイルでは 一般的なSALH(Semi-Active Laser Homing:セミアクティブ・レーザーホーミング)誘導方式を採用しています。 従来の64式対戦車誘導弾がミサイル本体と発射機をワイヤーで繋ぐ有線誘導方式であったため、ミサイルの飛翔速度が亜音速を大幅に下回り、非常に遅かったのに対して、 ワイヤレスのレーザー誘導方式を採用した87式対戦車誘導弾はミサイルの飛翔速度が5倍近くと大幅に向上し、目標への瞬間対処能力と命中精度も大きく向上しました。 また、64式対戦車誘導弾が車載もしくは地上設置からの運用しかできなかったのに対し、ミサイル本体や発射機などが大幅に小型軽量化された87式対戦車誘導弾は 隊員が肩に担いで運用することも可能となっています。
▲発射機に装備された光学照準機。
▲三脚架に取り付けられたレーザー照射機。このレーザー照射機から目標に対してミサイル誘導用の近赤外線レーザー(不可視)を照射し、 その反射光をミサイル先端に取り付けられたシーカーが追尾することで、ミサイルを誘導します。87式対戦車誘導弾は、 200m以内であれば発射機の設置地点とは別の地点にレーザー照射機を設置することも可能で、ミサイル発射地点の柔軟性と射手の安全性向上を確保しています。
▲レーザー照射機に貼り付けられた警告シール。
▲模擬戦闘訓練でも迫撃砲小隊が展開していた81mm迫撃砲L16も展示されていました。
▲銃火器や対戦車火器に比べて地味で一般受けが悪い装備なので、展示品のなかではあまり人気がありませんが、 基本的に近距離火力のみを有する普通科中隊において、迫撃砲は数少ない中距離火力のひとつで、欠かすことができない重要な装備です。
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