平成22年5月16日 陸上自衛隊新発田駐屯地創設57周年記念行事(その5)

AH-1S 対戦車ヘリコプター

Fuji AH-1S Cobra Attack Helicopter

2010年5月16日 陸上自衛隊新発田駐屯地創設57周年記念行

▲火器展示ゾーンからヘリ展示ゾーンへ移動。みんなの人気者、AH-1S対戦車ヘリコプターです。

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▲コックピット下部は各種資機材用のトランクとなっています。

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▲陸自の主力対戦車(攻撃)ヘリコプターであるAH-1Sは1980年代から調達が開始され、富士重工業(機体)と川崎重工業(エンジン)による ライセンス生産によって90機が生産されました。現在では運用寿命を迎えた初期導入時の機体から順次退役が始まっており、AH-1Sの保有数は70機前後になっています。 2001年、AH-1Sの後継機種として米ボーイング社製のAH-64Dアパッチ・ロングボウが制式採用されましたが、米本国での生産が終了した結果、部品調達の問題で 日本国内でのライセンス生産の継続が不可能となり、最終的に13機の生産で調達を打ち切ってしまいました。 当初、AH-1Sの代替として60機以上の生産を予定していたAH-64Dの後継機種も未定のままであり、当分の間は順次退役が進むAH-1Sを主力攻撃ヘリコプターとして使い倒すようです。

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▲敵からの視認性と被弾率の低下、そして機動性の向上を目的に前面投影面積を必要最小限に止めた結果、胴体幅1m以下という非常にスリムなボディを有するAH-1S。 1960年代、ベトナム戦争を契機に世界初の攻撃ヘリコプターとして誕生したAH-1シリーズは、当時その有用性が未知数であった攻撃ヘリコプターという存在価値を実戦で証明し、 コックピットのタンデム配置、武装懸架用スタブウィングの採用など攻撃ヘリコプターの基本形として、その後の各国における攻撃ヘリコプター開発に大きな影響を与えました。

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▲AH-1コブラシリーズは、多用途ヘリコプターのUH-1イロコイをベースに開発されたため、ローターシステムやエンジン配置など、全体のデザインはUH-1を踏襲しています。

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▲最大出力1,800馬力の単発ターボシャフトエンジンを備え、巡航速度は約230kmで航続距離は約450km。 単発機の弱点として飛行中に深刻なエンジントラブルがあると即座に墜落に繋がることから、 最新モデルであるAH-1WスーパーコブラやAH-1Zバイパーではエンジンを増設し、信頼性の高い双発機に改良されています。

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▲AH-1Sの機首前方。名称こそ“AH-1S”ですが、富士重工業でライセンス生産された日本製の機体は諸外国でいう発達型LAAT仕様の“AH-1F”に相当するモデルとなります。 コックピット後部にワイヤーカッターが装備されていないことから、74号機以降の夜間作戦能力向上型“C-NITE”仕様ではないことが分かります。

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▲攻撃ヘリコプターの最大の特徴であるタンデム配置のコックピット。AH-1コブラシリーズの場合、後席が操縦手、前席が射撃手となります。風防は防弾ガラスとなっており、 一定の耐弾能力を備えています。米陸軍向けに開発されたAH-1Sシリーズは他のコブラシリーズとは異なり、太陽光線による乱反射(フリッカー)を防ぐため 風防は曲面を廃して平面を多用した特徴的な角ばった仕様となっています。

TOW対戦車誘導弾

BGM-71 TOW(Tube-launched, Optically-tracked, Wire-guided)anti-tank guided missile

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▲左右のスタブウィングのハードポイントに装備されたAH-1Sの主力武装であるTOW(トウ)対戦車ミサイル発射機。 米国をはじめとした多数の西側各国で採用されている代表的な有線誘導方式の対戦車ミサイルです。 TOWは“Tube-launched, Optically-tracked, Wire-guided(発射筒発射、光学追跡、有線誘導)”の略称で、ミサイル本体はチューブ型のコンテナ内に格納されており、 発射機にチューブごと装着して運用します。TOWは主要コンポーネントを共通化した特徴によって、攻撃ヘリ搭載型、車載型、地上設置型など様々な発射機から運用が可能となっています。 ただし、標的着弾まで射手による照準誘導が必要であるなど、対戦車ミサイルの世代としては旧式化しており、米軍などではAH-64アパッチやAH-1W/Zなどで運用されている ヘルファイア対戦車ミサイルなどのファイア・アンド・フォーゲット(撃ち放し能力)を有する次世代型への代替が始まっています。

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▲AH-1Sは左右のスタブウィングに合計8発のTOW対戦車ミサイルを装備することが可能で、 今回は装備していませんが残りのハードポイントには他にも19発入り70mmロケット弾ポッドも懸架可能です。

3砲身20mm機関砲

M197 three-barreled electric Gatling-type rotary cannon

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▲機首先端のユニバーサルターレットに装備されたAH-1S唯一の固定武装であるM197 3砲身20mm機関砲。 M197は元々戦闘機などの大型航空機搭載用のM61バルカンをベースに開発された電動回転式多砲身機関砲で、M61の6砲身を3砲身に簡略化し、システム重量を 軽量化したことでヘリコプターなどにも無理なく搭載できるようにしたモデルです。砲身が半分に削減されたことで、ガトリングガンの特色である発射速度は M61の4分の1以下となりましたが、それでも発射速度はサブマシンガンなどと同程度の毎分650発を誇ります。

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▲AH-1Sは20mm機関砲弾を約750発携行でき、徹甲焼夷弾や焼夷榴弾、曳光弾など様々な弾種が使用可能です。 砲身は電動モーターによって駆動し、20mm機関砲の最大有効射程は数千メートルにも及びます。 M197ガトリングガンの上部には光学望遠鏡方式の照準装置が備えられています。

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▲こんなもので撃たれたら人間や非装甲車両は一溜まりもありませんが、現代の第3世代MBT(主力戦車)が誇る最新の複合装甲等には威力不足とも言われており、 米軍がAH-1コブラシリーズの後継機種として採用したAH-64アパッチシリーズには、より強力な30mm単砲身機関砲(M230チェーンガン)が装備さています。

UH-1J 多用途ヘリコプター

Fuji UH-1J Iroquois Utility Helicopter

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▲続いてUH-1J多用途ヘリコプターの展示スペース。

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▲米国のベル・エアクラフト社が1950年代にその原型を開発したUH-1シリーズは、世界各国で16,000機以上が生産された航空機史上に残る傑作軍用ヘリコプターです。 米軍が主導したベトナム戦争においては、ヘリコプターの空中機動能力を発揮したヘリボーン戦術の中核として多数のUH-1が実戦で使用され、 ベトナム戦争の象徴的存在としてその知名度を一気に高めました。 我が国においても1962年から富士重工業のライセンス生産によってUH-1Bが陸上自衛隊に採用され、1972年からは発展改良モデル(機体の大型化及びエンジンの高出力化) であるUH-1Hが生産されました。さらに1991年からはUH-1Hに富士重工業が独自の大幅な改良を施したUH-1Jが採用され、現在の陸上自衛隊における主力の多用途ヘリコプターになっています。

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▲後部キャビンは開放され、実際に機内に搭乗することができました。簡易式の座席が2つ備えられていましたが、 油断をすると頭が天井にぶつかり、機体の巨大さの割りに想像以上に機内は狭い印象でした。

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▲乗り込むことはできませんでしたが、コックピットも開放されていました。

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▲通常は操縦手と副操縦手が搭乗し、どちらの席に搭乗しても操縦が可能です。

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▲UH-60(ブラックホーク)シリーズの一部など、液晶ディスプレイ式のデジタル計器がメインとなるグラスコックピットが導入された最新の機体とは異なり、 UH-1Jは昔ながらのアナログ計器がメインとなっています。

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▲コックピット上部にもスイッチがいっぱいです。

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▲コックピットのセンター部分に位置するコンソール。何がなんだか分かりません(笑)。

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▲機体側面にはメインローター整備時など、機体上部に登る際に使用する足かけが装備されています。

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▲後部キャビンには予備の燃料タンクが積載されていました。

OH-6D 観測ヘリコプター

Kawasaki OH-6D Cayuse Observation Helicopter

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▲最後はOH-6D観測ヘリコプター。

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▲OH-6Dは小回りの利く機体性能を活かして敵勢力の布陣構成や規模などを偵察し、各種戦術データを収集します。 航空偵察や弾着観測を行うための軽観測ヘリコプターとして導入された米国ヒューズ社製のOH-6Dは、 川崎重工業で1979年から1997年の生産終了までライセンス生産され、陸上自衛隊や海上自衛隊などで 運用。 卵を連想させる特徴的なキャビンの形状から“フライングエッグ”の俗称でも知られており、 観測任務の他に人員・物資の搬送も可能なOH-6Dは平時における運用柔軟性も高く、災害派遣活動等でも活躍します。

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▲真正面の様子。上部のメインローターは5枚仕様です。

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▲テールローターからのリアビュー。AH-1SやUH-1Jに比べると、一回り小型な印象です。

人命救助システム

Rescue System

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▲ヘリを見終えた後は、災害派遣用の装備資機材である人命救助システムの室内展示を見学してきました。

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▲災害派遣時等において使用される個人用器材。レスキューリュックやレスキューベスト、ケブラー製の特殊作業手袋、スリングロープ、ハンドアックス、 多用途ナイフなど必要最小限の救助器材がセットになっています。

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▲岩盤やコンクリートの破砕に使用するピストン式破壊工具。ハンドル部分に5種類(バール・ノミ・タガネ・ワイドタガネ・メタルカッティング用タガネ)のアタッチメントを装着し、 ドロップハンマー方式で打ち付け、モルタルやレンガブロック壁、石材、軽金属類の破壊が可能なほか、ドアや窓の破壊、こじ開けができます。

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▲瓦礫の下にいる被災者を迅速に救助するための鉄筋等の切断、瓦礫等の揚重作業に使用するカッター・レフレクター・ジャッキ。 カッターの切断力は34t及び最大で直径12.5cmの鉄筋が切断可能。ジャッキーは最大で19tの荷重を持ち上げることができ、 手動油圧ポンプも使用できます。

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▲鉄筋コンクリート建造物の鉄筋部分の切断に使用する手動カッターによるピストン式破壊工具。 鉄筋コンクリート用棒鋼であれば、最大で直径16mmのものまで切断可能。油圧ポンプ部は自由に回転し、 取り回しが楽なことから、狭小空間での作業に適しています。また、ジャッキー・スプレッダーとしても使用できます。

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▲破壊構造物探索機。先端部にレンズのついた光ファイバーケーブルを瓦礫の空隙に挿入し、被災現場における埋没者の状況を直接肉眼で確認することで 救助方法の選定を行います。 先端部は照明を内蔵し、上下120度、左右90度に可変でき、挿入部は全長3mあり、完全防水仕様となっています。

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▲捜索用音響探知機。振動センサー及び音響センサーを用い、被災現場における脱出不能者からの救助音を聴取・探知し、要救助者の所在を明らかにします。 ヘッドホンを同時に2個使用することが可能で、これにより複数の人間による確実な音源の特定作業が行えます。

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▲戦闘装着セットの一部である88式鉄帽と戦闘防弾チョッキ2型(改)。戦闘防弾チョッキの胸の部分には、イラク派遣時に使用されたフラッグパッチが装着されています。 このコーナーでは実際に試着もできました。

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▲こちらは暴動鎮圧用のライオットシールド。高強度樹脂の透明ポリカーボネート製です。

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▲一通り展示品を見終えたので、そろそろ撤収します。ご一読ありがとうございました。それでは!

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