シュアファイアSUREFIRE
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会社が設立された直後の1979年末、同社は早くも市販レーザー・サイト・システムの第一号である“LPCモデル7”を発表する。 LPCモデル7は、.357マグナム弾薬に準拠した大型リボルバーであるコルト社製トルーパーのサイト・ライン上に、 当時産業用レーザーとして一般的だったガス(気体)レーザーの一種であるHe-Ne(ヘリウム・ネオン)レーザー発振器を搭載し、 カスタムされたパックマイヤー社製グリップ下部に作動用の大型バッテリーを備えていた。 小型軽量な半導体レーザーが主流となった今日の製品と比較すると、黎明期のレーザー・サイトは極端に大きく見えるが、まだ技術的過渡期にあった当時の産業用レーザー製品の実情を鑑みれば、レーザー発振器の小型軽量化を図った革新的な製品といえる。 業界初の完全なレーザー・サイトとして販売されたLPCモデル7のユーザーへの製品供給を通じ、同社ではレーザー・サイトの運用コンセプトが多角的に検証され、開発ペースを加速する。 その後、同社レーザー・サイトの開発陣は、米国の民間銃器市場にも輸入されていたHK94セミオートマチック・ライフル及び米国の警察SWATチームにおいて採用の急増していたH&K社製MP5サブ・マシンガン、 レミントン社製M870ショットガン、スターム・ルガー社製Mini-14及び派生型のAC-556ライフル、米軍で制式採用されたコルト社製M16アサルト・ライフルをはじめ、ユーザーの需要に応じて多数の銃器と統合したレーザー・サイト製品を開発した。 |
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当初、銃器業界はこの新技術の戦術的優越性に懐疑的であったが、1984年に発生した二つの契機がレーザー製品に脚光を浴びせることになる。 一つ目は1984年に開催されたロサンゼルス・オリンピックだ。当時世界的に多発していた凶悪テロリズムに対し、対テロ作戦能力を強化するロサンゼルス市警察(LAPD)所属SWATチームの要請を受け、レーザー・サイト・システム搭載のショットガンを納入した。 全米屈指の大都市を管轄するLAPD SWATチームは、全米に先駆けて編制された米国における警察戦術部隊の始祖であり、当時から現在に至るまで米国の警察SWATチームにおいて最新の戦術と装備を備えている。 この最精鋭部隊であるLAPD SWATチームへの製品納入は、マシューズが彼のチームと人生を捧げて造り上げたレーザー・サイト・システムが高度な戦術装備として、第一線のプロフェッショナルに認められたことを内外に示した。 二つ目は同年、全米で公開されたアーノルド・シュワルツェネッガー主演の大ヒットSF映画“ターミネーター(The Terminator)”において、銃に搭載されたレーザー・サイトが映像表現として印象的に使用されたことだ。 これにより、プロフェッショナル・ユーザーだけでなく、潜在的顧客である一般の銃器愛好家にもレーザー・サイトの存在を広く認知させる。 その後、1985年に開発されたハンドガン専用のレーザー・サイトには、“確実な”を意味する形容詞“surefire”から引用し、“信頼に足る明かり”の意を込めた“SureFire(シュアフィア)”のブランド名が初めて冠されている。 以来、同社の製品ブランドであるシュアファイアは、法執行機関における戦術装備で最も信頼さえるブランド名の一つに成長した。 |
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当初、レーザー・サイトを主力製品としていたレーザー・プロダクツ社だが、1980年代後半には高性能フラッシュライト及びウェポンライトの開発製造に注力を開始した。
各国で対テロ特殊部隊の重要性が認識され始めた1980年代、従来の軍隊における伝統的な野戦では殆ど重視されてこなかった ロウライト・コンディション(低照度環境)であったが、
CQB作戦環境下におけるロウライト・コンディションのリスクの高さに直面した対テロ特殊部隊では、必然的にMP5サブ・マシンガン等のプライマリー・ウェポンにフラッシュライトが取り付けられた。
当初、その堅牢性と柔軟性の高さから米国の司法機関を中心に採用され、爆発的にシェアを広めていた米国マグ・インストルメント社製のマグライト・シリーズが用いられることが多かったが、
大型で重量のあるマグライトはライフルやサブ・マシンガン等に装着される場合が殆どで、ハンドガン等の小型の銃器には適さなかった。
CQBにおける新たなフラッシュライトの需要に着目したレーザー・プロダクツ社は、“小型軽量ながら大光量”という新コンセプトのフラッシュライトを生み出す。
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シュアフィア M900A バーティカル・フォアグリップ・ウェポンライトSUREFIRE Model 900A-TN-RD Vertical Foregrip WeaponLight |
SUREFIRE(シュアファイア)M900Aバーティカル・フォアグリップ・ウェポンライト(本体色:デザート・タン、ナビゲーション・ライト色:レッド)は、 キセノン・バルブ仕様の大出力イルミネーターとバーティカル・フォアグリップ機能を一体化したウェポンライトだ。 元来、バーティカル・フォアグリップにフラッシュライトを組み合わせるというアイデアは、 米国の特殊作戦装備メーカーであるWilcox(ウィルコックス)が1990年代に開発したパワー・グリップ(フラッシュライトとレーザー・サイト機能も付加された多機能イルミネーター)という製品が元祖だが、 米国の一部の特殊作戦部隊に使用されるだけで広くは普及しなかった。 しかし、SUREFIRE社が開発したM900シリーズは、長年にわたって軍用ウェポンライトを製造してきた同社製品の堅牢な信頼性に加え、 それまでの既存製品にはない人間工学に基づいた秀逸なデザインと機能性の高さが評価され、2000年代前半の販売以降、軍・警察所属の対テロ特殊部隊や民間軍事会社(PMC)をはじめ、官民問わず世界各国の戦術部隊で運用された。 M900シリーズには採用したレール・クランプのアタッチメント・デバイスごとに、スルー・レバー方式を採用したM900、インテグラル・サムスクリュー方式を採用したM910が展開されている。 さらに両モデルは共通のバリエーションとして、ブラック(BK)及びタン(TN)の2種類の本体カラー、メイン・ランプ・ヘッド上部に設けられたデュアルLEDナビゲーション・ライトの4種類の搭載LEDカラー(ホワイト、レッド、ブルー、IR)が選択できた。 |
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▲本体には同社のハンディ・フラッシュライトであるG2シリーズで採用されていたガラス繊維を含む強化合成樹脂(ナイトロン・ポリマー)、 金属部分には軍用規格の硬質アルマイト(ハード・アナダイズド)処理が施された軽量かつ高強度な航空宇宙用アルミニウム合金が用いられた。 本体重量は内蔵バッテリーを含むと500gを超えるが、特殊作戦の環境下にも耐える高い堅牢性を実現している。 |
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▲本品には20mm幅ピカティニー規格のレール・システムに対応したアタッチメント・デバイスが採用されており、同レール・システムを備えるライフル、サブ・マシンガン、ライト・マシンガンなど様々な銃種で運用できる。 |
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▲本シリーズには採用したレール・クランプのアタッチメント・デバイスごとに、迅速な着脱が可能なスルー・レバー方式を採用したM900、強固な固定が可能なインテグラル・サムスクリュー方式を採用したM910が展開された。 |
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▲M900及びM910ともに、特殊作戦向けハンディ・ライトであるM3シリーズの標準ランプ・ヘッドを搭載した“A”型、遠距離照射能力に優れた大型の2.5インチ径ターボヘッド搭載の“AB”型が存在する。 ランプ・ヘッドのアタッチメント規格は、M3シリーズと完全互換性があり、M3シリーズ用のLEDランプ・ヘッドであるL6など関連アクセサリーを装着することが可能だ。 また、ランプ・ヘッド上部にはデュアルLEDナビゲーション・ライトが搭載されており、ステルス性を保ちながら必要最小限度の光量で足元などを照らすことができる。 搭載されたLEDカラーは、ホワイト、レッド、ブルー、IR(赤外線)の4種類から選択可能だ。 |
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▲ランプ・ヘッドには耐衝撃構造が採用されており、落下時の衝撃や射撃時のリコイルからランプを保護する。 さらに各接続部はOリングによるシール構造によって、特殊作戦に不可欠な防塵・防水性能を保っている。 |
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▲ランプ・ヘッドに標準搭載されたMN10バルブ。M3シリーズやM961/M962ウェポンライトをはじめとした9Vライト・シリーズ向けキセノン・バルブで、光束125ルーメン、60分の連続点灯時間を提供する。 また、このMN10以外にも同規格の高出力バルブであるMN11(光束225ルーメン、連続点灯時間20分)も搭載可能だ。 ライト・ヘッドにはオプションのレンズ・プロテクターや各種カラー・フィルター、IRフィルターを装着運用できる。 |
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▲フォアグリップ下部のバッテリー・キャップを外し、フォアグリップ内に3本(9V)の123Aリチウム・バッテリーを内蔵する構造だ。 フォアブリップ下部にはバッテリー・キャップの弛み防止用のロックが設けられている。 なお、メインのキセノン・バルブは無関係だが、ナビゲーション・ライトのLEDには極性があるため、バッテリー挿入方向には注意だ。 |
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▲フォアグリップ両側面には、押下したときのみ点灯するモーメンタリー方式のラバー製プレッシャー・パッド・スイッチが装備されており、フォアグリップを把持した射撃状態でも容易にライトの点灯をコントロールすることができる。 バッテリー・キャップ下部には主電源のON/OFFを切り替える大型の回転式スイッチが設けられており、保管時や輸送時の誤点灯を防ぐ構造だ。 |
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▲フォアグリップ上部には、LEDナビゲーション・ライト用のラバー製モーメンタリー方式プレッシャー・パッド・スイッチが装備されており、フォアグリップを把持した状態でも親指でライトをコントロールすることができる。 |
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▲ライト・ヘッド後部に設けられた大型の回転式スイッチを操作することで、プレッシャー・パッド・スイッチによる間欠点灯モードから、常時点灯モードに切り替えることが可能だ。 |
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▲アタッチメント・デバイスにスルー・レバー方式のレール・クランプが採用されたM900では、米国の主要ガン・アクセサリー・パーツ・メーカーであるA.R.M.S.(Atlantic Research Marketing Systems)社製の小型軽量な商用ユニバーサル・プラットフォーム“#17 Single Lever Tri-Lock Mount”が装着されている。 |
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▲M910に装備されている一般的なサムスクリュー方式のレール・クランプに比べ、A.R.M.S.社の特許であるスルー・レバー方式により、レバーを半回転操作するだけで確実な着脱が可能だ。 |
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▲LEDウェポンライトの普及が加速した2000年代後半以降、M900シリーズには高出力LEDヘッドを搭載したM900Vシリーズ(IR切り替え式ヘッド搭載)やM900Lシリーズ(最大光束1000ルーメン)などの派生型が製造された。 長年にわたって世界各国のタクティカル・オペレーターに愛用されたM900シリーズだが、技術革新によって小型電源でも大出力のLEDモジュールが実用化されたことで、LEDウェポンライトも“小型・軽量化”が趨勢となり、M900シリーズのようなフォアグリップ一体型の大型で重量のあるウェポンライトの需要は必然的に低下した。 2010年代中頃にはLED搭載の派生型を含めてM900シリーズの生産は終了しており、その後も後継モデルは開発されていないが、製造終了から数年が経過しても一部の戦術部隊では依然としてM900シリーズの運用が確認できる。 なお、我が国にもSUREFIRE社の正規代理店が置かれており、同社製品が自衛隊や警察をはじめとした各官公庁に納入されている。 2007年2月、陸上自衛隊第1師団と埼玉・茨城両県警察にって行われた合同治安出動実動訓練では、初公開された埼玉県警所属の銃器対策部隊(RATS)の隊員がM900シリーズの装着されたMP5サブ・マシンガンを携行して登場した。 また、2015年12月に報道公開された警視庁及び神奈川県警所属SAT(特殊急襲部隊)との合同訓練では、SAT隊員が携行するMP5サブ・マシンガンへのM900シリーズの装着運用が確認された。 その直後、2016年3月に報道公開されたRATS参加の埼玉県警警備部長査閲では、本品と同じデザート・タン・カラー仕様のM900A(なしいM910A)の運用が確認できる。 |
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