平成25年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習(その1)

イベントリポート

Event Report

2009年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設60周年記念行

■ Introduction

2年ぶりとなる富士総合火力演習に行ってきました。今回の目玉は何と言っても昨年から初参加となった最新鋭の10式戦車。 世界最高レベルのスラローム走行間射撃やネットワークを共有した多目標同時射撃など、10式戦車の挙動の全てをばっちり動画に納めてきたのでご覧ください。

一般に総火演と略される富士総合火力演習は、毎年静岡県御殿場市の東富士演習場畑山地区で実施される陸上自衛隊最大規模の実弾演習訓練です。 元々、総火演は陸上自衛隊の教育訓練を担う富士学校の生徒への教育展示を目的として1961年から開始されましたが、 1966年からは国民に対する広報を目的として一般公開が行われています。 陸上幕僚部主催の一般公開演習を観覧するためには基本的に応募による抽選に当選し、入場券を入手する必要がありますが、近年は自衛隊人気の高まりから倍率が高騰しており、 抽選による方法で演習を観覧するのは難しい状況にあります。 一方、富士学校主催の一般非公開演習(団予行、学校予行、教育演習)の入場券は自衛官や自衛隊関係者などにしか配布されないため、 これらの演習を観覧するには関係者経由で入場券を入手したり、招待してもらう必要があります。 今回は一般非公開の教育演習を観覧することができたので、その様子の一部をご紹介します。 総火演は陸上自衛隊の主要装備品を紹介する前段演習と、実際の戦闘を想定して各職種が共同で作戦を行う後段演習の2部で構成されますが、 今回のレポートでは動画を交えて時系列で紹介したいと思います。

平成25年度富士総合火力演習ダイジェスト動画

Japan Ground Self-Defense Force / JGSDF 2013

▲2時間以上にわたる前段・後段演習のハイライトシーンを170秒にまとめたダイジェストムービーです。


2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲新潟を深夜に出発して高速を乗り継ぐこと数時間。ようやく朝焼けの富士山麓に到着しました。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲2年ぶりの東富士演習場。まだ午前8時過ぎですが、真夏の太陽がジンジンと容赦なく照り付けます。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲移動の最中、聞き覚えのあるローター音の方向に顔を向けると、遠い雲の中にアパッチを発見。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲2年前はシート席でしたが、今回はスタンド席の最上段をゲット。演習区画から距離がある分、迫力は直近のシート席に劣りますが、 高さのあるスタンド席は会場全体を楽に俯瞰できるメリットがあります。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲毎年恒例のオーロラビジョン。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲午前9時を過ぎ、続々と観客が集まります。

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▲演習開始までの間、音楽隊による演奏が披露されます。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲演習区画では砂埃の飛散防止ため、大量の散水車がせっせと水を撒いています。

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▲これだけ大量の散水車を一度に目にする機会はないでしょう。散水車マニアには堪らない光景のはずです。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲こちらは地味に珍しい自衛隊の散水車です。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲観客席は満員状態。雲が出てきましたが、天候は良好です。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲定刻の午前10時。まずは陸上自衛隊が運用する主要装備を紹介する前段演習の開始です。

99式自走155mm榴弾砲

Type 99 155 mm self-propelled howitzer

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲最初は遠距離火力として特科火力の主力火砲が登場。

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▲75式自走155mm榴弾砲の後継として開発された99式自走155mm榴弾砲。砲身長が75式の30口径から52口径に延長され、これにより最大射程は75式の19kmから30kmまで 約1.5倍以上延伸されました。長射程のベースブリード弾使用時は、最大射程は約40km。 砲弾及び装薬装填の完全自動化が実現され、最大毎分6発以上の発射速度を有します。 自動装填装置を搭載しながら装薬のみ手動装填であった75式の乗員数が7名であったのに対して、完全自動化された99式では乗員数が4名まで省力化されました。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲99式自走155mm榴弾砲は、野戦特科全体を指揮可能な野戦特科射撃指揮装置(Field Artillery Digital Automatic Computer:FADAC)にデータリンクされた高性能な射撃統制装置を搭載しており、 射撃指揮所と連携した高精度な射撃が可能となっています。 最大速度は時速約50km。調達価格は約9億6,000万円。自衛隊での略称は「99HSP」、愛称は「ロングノーズ」となっています。

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▲155mm榴弾着弾の様子。

99式自走155mm榴弾砲 実弾射撃

Type 99 155 mm self-propelled howitzer


203mm自走榴弾砲

8 inch (203 mm) Self-Propelled Howitzer M110

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▲遠距離火力・特科火力として自走榴弾砲による射撃が実施されます。こちらは陸自最大の特科火力である203mm自走榴弾砲。 元々は米国が開発したM110A2自走榴弾砲を1983年から日本国内でライセンス生産したもので、砲身はFMS(対外有償軍事援助)で米国から調達し、 車体を小松製作所、砲架を日本製鋼所が生産しています。給弾や装填などが自動化されており、1門あたりの操作人員は13人となっています。 最高時速54kmで自走可能なことから、陣地進入から射撃後の陣地変換まで従来の牽引式重砲に比べ、迅速に行うことが可能です。 自衛隊での略称は「20HSP」、愛称は「サンダーボルト」。 ちなみに本家米国陸軍では遠距離火力支援任務が重砲からMLRS(多連装ロケットシステム)に置き換えられ、M110A2は順次退役しています。



155mm榴弾砲 FH70

FH70 Field Howitzer

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▲74式特大型トラック(7tトラック)をベースにした中砲けん引車に牽引されてきた155mm榴弾砲FH-70。 1970年代に欧州で共同開発され、NATO加盟各国に制式採用されている定番主力中砲であり、 我が国では1983年からライセンス生産が開始され、全国の野戦特科に400門近くが配備されています。 一応、車体に自走用のガソリンエンジンのAPU(補助動力装置)を搭載しており、短距離であれば発射地点まで牽引なしで移動可能です。 ちなみに愛称は「サンダーストーン」。制式採用から30年以上が経過し、全国で順次退役が始まっています。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲最大射程は通常弾で約24km、ロケットモーター搭載の噴進弾の場合は約30km。 使用される155mm榴弾は重量43.5kgで弾頭に11.3kgの高性能炸薬が内蔵され、 着弾と同時に約4千個の弾殻断片を全方位に飛散させ、半径350mまで危険地帯となり、 敵人員や建造物を容赦なく破壊する強力な打撃力を有します。

弾道現示・TOT曳火射撃

Time on Target

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲総火演の目玉のひとつである特科部隊によるTOT(Time on Target)曳火射撃。 砲種や射距離の異なる合計21門の火砲を用いて、100分の1秒単位で多数の砲弾を目標上空において同時に爆発させ、 空中に富士山を描くという非常に高度な技量と練度を要する射撃演目です。今年も見事に富士山の輪郭が描かれました。



2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲陣地変換を行う99式自走155mm榴弾砲。飛翔する砲弾の弾道を捉える対砲兵レーダーとコンピュータの発達により、 砲弾発射地点の即時算出が容易になった現代においては、砲撃後に敵からの反撃を想定して素早く陣地変換する「ヒット・アンド・アウェイ」が原則。 高い機動性能を誇る自走砲の優位性はここにあります。

2013年8月22日 陸上自衛隊 平成25年度富士総合火力演習

▲203mm自走榴弾砲も最高時速約55kmで走行することが可能です。

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▲牽引式の155mm榴弾砲 FH70ですが、出力1,800ccの補助動力を搭載しており、短距離であれば自走可能ですが、最高時速約16kmと自転車並みの低速であるため、 自走砲との陣地変換速度は雲泥の差です。

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