平成21年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設59周年記念行事 -装備品展示編その1-

2009年4月19日 陸上自衛隊高田駐屯地創設59周年記念行

▲午後のメインイベントである装備品展示。なんやかんやで開場ゲートの先頭に並びました。 わざわざ一番乗りの先頭に並んだ理由は後述。 ここでは様々な車両や航空機などが展示されており一通り全部見ましたが、観閲行進での説明と被る装備 が結構多いので割愛します。やっぱり特殊部隊好きとしては小火器などの個人装備に注目せねばなるまい!

74式戦車

Type 74 tank

74式戦車

▲とか言いながら言責無視で初っ端から74式戦車の登場。えぇ陸戦の王者たる戦車は別です。 なんたって実はコレ先頭に並んだものだけが撮れる奇跡の一枚なのです(笑)。 この3分後には通常装甲の見る影もなく無垢なキッズアーマーで全体が覆われます。

74式戦車

▲真正面からのショット。さすがに現在主力の第三世代MBTには火力・防御力・機動性ともに到底 敵いませんが、採用当時は第二世代の中でも射撃精度や姿勢制御技術などでトップクラスの性能を誇りました。 角ばった90式とは対極的に避弾経始を考慮した有機的なアールが特徴的な何とも セクシー(!?)なシルエットをもつ74式には今でもファンは多いはず。

89式5.56mm小銃

Howa Machinery Type 89 Assault Rifle

89式5.56mm小銃

▲例外の戦車をカメラに収めたら続いて本命の小火器展示ゾーンにダッシュします。 こちらは内心では本日一番の目玉にしていた89式小銃。もちろん天下の東京マ●イ製ではなく本物です。 ふと思ったらこんなサイト作っておいて実は実銃を触るのは人生初(笑)。 89式小銃は防衛省自衛隊だけでなく、海上保安庁の特別警備隊での使用が確認されており、都道府県警察に設置されている 特殊急襲部隊(SAT)にも導入されているという噂です。

89式5.56mm小銃

▲近づいて見ると渋く輝く使い込まれた感もありながら、よくメンテされた金属レシーバーが明らかに トイガンとは異なった重々しい雰囲気を醸し出しています。 曲がりなりにも傑作アサルトライフルのM16シールズで名を馳せるアーマーライト系統の遺伝子を受け継いでいる89式小銃。 少なからず機械的構造や実射性能の心配はないでしょう。しかしながら……。

89式5.56mm小銃

▲これ。方々様々なメディアから指摘されてますが実際どうなんでしょう。魔法のおまじない“ア・タ・レ”が冠された安全装置。 そりゃ即応性より匍匐時などの安全性を第一優先にすれば極論として右側の配置になるでしょうし、従来の自衛隊 のように専守防衛に徹する戦闘スタイルであればそれほど支障はないかもしれません。 ちなみ“ア・タ・レ”は“安全・単射・連射”の意味ですが、あくまで“当たれ”読みは縁起担ぎ。 実際に回転式セレクターを動かした場合の順番は“ア・レ・3・タ”で、“安全・連射・3点制限点射 (3バースト)・単射”となります。3バーストの有効性は一長一短なので触れませんが、問題は切り替えの順番。 セーフから急にフルというのは代表的なアサルトライフでは西側のAR系統とは全く異なる東側のAK(カラシニコフ) 系統ぐらいですが、あれなんかは開発から半世紀以上が経過した今でも89式小銃と同じく右側に安全装置があって、 切り替えの順番も同様に安全・連射・単射の順です。 しかし、AKは開発時の基本コンセプトとして単射による精密射撃というより正に突撃銃の名の通り、7.62mmの強力な弾丸 をフルオートで局所的にばら撒いて短期制圧するという使い方が目立ち、そのため野戦では右側安全装置の不便な 影響も特にないようで今では小さな大量破壊兵器として盤石の地位を築いています。 89式も野戦においてAKと同様本来のアサルトライフルとしての運用を行っていくというのなら、まぁそれでも実際 好ましくないですが特に大きな影響もないでしょう。 ところが近年、野戦向き一辺倒の基本設計であるコイツを新時代に伴うテロとの戦いの新任務であるCQB(近接戦闘) を含む市街地戦闘に用いようとすると不都合というか、タクティカルアドバンテージを極端に低下させる事態になるわけです。

89式5.56mm小銃

CQBで生き残るポイントは第一にスピードです。閉所空間におけるCQBは敵と数百メートルも離れた従来の野戦とは 全く異なり、ドアの向こうやコーナーでの出会い頭など敵との距離は僅か数メートル圏内が殆どで、瞬時の目標視認 と状況判断そして正確ながら瞬間的な射撃技術が要求されます(法執行機関所属の警察特殊部隊などであれば、これに擬律判断も加わります)。 このセオリーに照らして困っちゃうのが89式の安全装置。まずM16など殆どの同世代アサルトライフ(より開発時期では最新のはずが…)なら当然のように 行えるはずの利き手親指での瞬時の切り替えが出来ない。このセーフティー解除に要するタイムロスはハッキリ いってCQBにおいては致命的です。ハイリスクエントリーでは常にセミにしてフィンガーセーフティーで乗り切る という場合も多いですが、安全性から鑑みてこの状況は限られます。 さらなる問題は先述したセーフから急にフルの順番です。野戦における制圧射撃というのでればAK同様、さほど問題は ないでしょうが、サブマシンガンなどと異なり、基本的にCQBにおいてアサルトライフルのフルオート射撃の使用頻度 は非常に限られます。 運用部隊の作戦規程にもよりますが、CQBにおいて特殊な状況でない限りは貫通力の高いアサルトライフルの射撃は 基本的にセミオートオンリーで挑みます。 なぜかというとCQBを伴う市街地戦闘は、その名の通り多くの民間人が居住する生活空間の中で行われます。 国民を脅かす敵を排除すべくフルオートで斉射した弾丸の流れ弾が、本来護るべきはずの国民に危害を加えたのでは 本末転倒です。民間人へのコラテラルダメージ(付帯的損害)を最小限に留めるためにも正義の名を冠した武力を行使 する人間、つまり自衛隊員には正確なセミオートによる一撃必中の射撃精度が求められるのです。

89式5.56mm小銃

日本独自の防衛戦略に即した銃器哲学で完成された89式小銃は、他国の最新アサルトライフルに比較すると見劣り する部分も多くありますが、日本のお家芸である工作精度の高さを生かした基本性能は決して悪くなく、むしろ 諸外国と同様に現場の要求に見合う戦術的改良を施し、ブラッシュアップすれば他国の最新アサルトライフルに 比肩し得る存在となる可能性を秘めています。 近年ではようやくCQBを始めとした新時代の任務の趨勢に応えて、既存の89式小銃に対して件の切り替えレバーの問題 は無論、各種オプションデバイスに対応したレイルシステムや銃身の短縮カービン化、さらにはビデオ機能を含む 情報共有装置の搭載などの各種改良を施した試作モデルの開発が先進軽量化小銃の名目で進められており、 今後登場するであろう進化発展した次期国産小銃には大いに期待!

89式5.56mm小銃

▲試しにボルトキャリアーと一体の円形チャージングハンドルを引いてみましたが、思ったほど重くなく何か 金属モデルガンみたいな感覚。エジェクションポートからはロテイティングボルトの先端にあるロッキングラグ とエキストラクター、その中心部分に撃針が見えます。

89式5.56mm小銃

▲こちらは後部のリアサイト。自衛隊用語でいうところの照門。現代の軍用小銃としてはスタンダードな ピープサイトでエレベーションとウィンデージの調整はダイヤルクリック式。

89式5.56mm小銃

▲前部のフロントサイト。これまた自衛隊用語で照星。専用工具で上下調整が可能です。

64式7.62mm小銃

Howa Machinery Type 64 Assault Rifle

64式7.62mm小銃

▲お次は64式7.62mm小銃。これまた今となっては(昔から!?)正直微妙な存在です。というか一応世界屈指の経済力を誇る先進国家が未だに 基本設計が60年代から一切発展改良なしの木製ストック装備大口径バトルライフルを数の上で事実上主力配備しているとい うのはどうなんでしょう。ようやく最近でこそ5.56mm準拠の89式小銃が戦闘職種である普通科に行き渡った ようですが、施設科などの非戦闘職種では未だ現役で海自と空自に至っては64式しかない状況です。 不幸中の幸いか近年の米軍などでは5.56mm弾の威力不足から50年代に設計されたM14などを主に一部7.62mm弾 への回帰が見られ、また陣地防御などの防衛的作戦においては7.26mm弾の長射程とパワーは大変有効です。 なので個人的には米軍と同じく今後も暫くは小銃用に5.56mm弾と7.62mm弾のハイローミックスを継続するこ とには大いに賛成なのですが、問題はその弾を撃つ銃の方にあるわけで…。

64式7.62mm小銃

▲またまた登場“ア・タ・レ”の魔法の言葉。もう切り替えレバーの位置が右側云々は89式でさんざん 愚痴ったので控えます。切り替えの順番は言葉通り“安全・単射・連射”と世界標準をクリア、なんで 次代の89式であんな改悪が成されたのか…。ところがコイツは冷戦期の“訓練だけで戦わない自衛隊” を正に標榜するような安全装置を持ってるんです。

64式7.62mm小銃

▲なんとコレ指でつまんで持ち上げないと切り替えできないんです。 もう設計時から実戦における戦術的優越性とか二の次で訓練での安全性を最優先したとしか思えません。 ここまでくると同じく7.62mm準拠で同時期に開発されたはずの旧西ドイツ軍制式採用H&K社製G3とかが 四半世紀未来を行くスーパーウェポンに思えてきます。 小柄な小口径で幾分マシな89式がある陸自はともかく、市街地戦闘訓練を受ける空自の基地警備隊などでは 依然として不向きな大口径に加え大柄で重量4.4kgとCQBウェポンとは程遠い64式を使用中。

64式7.62mm小銃

▲アッパーレシーバー上部にあるボルトキャリアーと一体型の特徴的なコッキングハンドルを引いてみます。 これまた89式と同様に重そうな印象がありましたが、人差し指一本で引けるくらいスムーズに可動しました。 実射時はボルトの後退でここから排莢されます。

64式7.62mm小銃

▲こちらは折畳み式のリアサイト(照門)。 可動式の照門と照星は何かにぶつかったり射撃時の反動で倒れることがあり、正確な照準点を確保できない とかで、現場の隊員からは不評のようです。不覚にもフロントサイトの画像は撮り忘れたのでありません(汗)。

ミネベア 9mm機関拳銃

Minebea PM-9 Submachine Gun

9mm機関けん銃

▲続いてこれまた突っ込みどころ満載の異端サブマシンガンである9mm機関拳銃。 正直これ持つんだったら、正真正銘のマシンピストルであるグロック18Cとかの方が小型軽量なぶん幾分マシなような…。 そもそも国防の顔たる主力小銃などは技術力維持の観点などから極力国産である必要性はありますが、少数配備の 個人自衛用のサブマシンガンくらい輸入品でもいいような気がします(自衛用に今時サブマシンガンというのも 若干時代遅れな話ですが…)。実際米軍は同サイズでフォアグリップ&折り畳みストック装備のMP5K PDWを特殊部隊 のみならずヘリクルーの自衛用などに採用していますし、最近ではMP7など重量が9mm機関拳銃の半分以下で コンパクトサイズながらフォアグリップ&伸縮式ストック装備で特殊な小口径高速弾を使用して、防弾装具に 対する貫徹力・射程・射撃精度など軍用のサバイバルウェポンとしては十分な火力を有したモデルも市場に 出回り、各国軍に採用されています。自衛隊もこういうところは融通を利かせてほしいんですが…。 国民から徴収した貴重な血税で1丁30万円以上もする値段でこれを平然と買う以前に、 世界の常識に即して有意義に装備を買ってもらわないと護られる国民も納得できません。

9mm機関けん銃

▲フォアグリップがなければ完全にミニUZIのコピーと揶揄されても致し方ないデザイン。 というか他の純国産装備と異なり部隊使用承認のみで○○式と命名されていないことから、 開発においては海外銃器メーカーの関与があったとされ、外観デザインや構造がUZIに酷似していることから恐らくはイスラエルのIMI(現IWI)と 契約を交わした可能性が高いと思われます。ただし、その辺の情報は防衛省側から一切公開さていないため真偽は不明。 UZIと同じく旧来の軍用サブマシンガンとしては信頼性の高いオーソドックスなオープンボルト方式で、 そりゃ作動性や耐久性の問題はないでしょうが最大の問題は実用性の薄弱さにあります。 まず個人自衛用火器、つまりPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)として持たせるにはこのサイズで 重量2.8kgは少し重すぎます。こえを持たされる自衛官の身にもなってください。そもそもMP5などならいざ知らず、 イングラム並みの毎分1,100発などという超高速な発射サイクルを有するマシンピストルが 現代のPDWに必要なのかというのも疑問のひとつ。 ベトナム戦争時に米軍の特殊部隊が敵地に秘匿潜入する際、カービンと共にイングラムを携行し、接敵した際には イングラムの殺人的な超高速フルオートで瞬間的な弾幕を張り、敵が頭を下げている隙に離脱するという使い方をしていましが、 こうした戦法は少数精鋭でヒットアンドアウェイを得意とする特殊作戦などに限られます。 ただでさえオープンボルト方式のサブマシンガンは精密射撃には不向きなのに、射手は25発の弾倉が1秒弱で 空になる暴れ馬をストックもなしでファグリップとスリングのテンションだけで制御しなければなりません。 こうなると人体目標サイズに対するフルオート射撃の致命的命中弾は頑張って30m前後が限界です (というか公表されている有効射程が25m…)。 セミオートなら拳銃より精度が高くていいとか聞きますが、そりゃ銃身長も長くてストックが無いといっても フォアグリップにスリングも付いてれば拳銃より有効射程が長いのは当然の話。 射撃精度は度外視でただフルオートで弾幕を張るためだけに使うという設計思想なら、ある意味割り切ったデザインともいえます。 世界屈指の工業先進大国が本当に1990年代に開発したとは思えないほど時代錯誤で中途半端な存在 と言わざるを得ません。

9mm機関けん銃

▲…で実用性そのももの問題は百歩譲るとしても、これまた国産銃にはお決まりの厳重な安全装置兼 切り替えセレクターが障壁として立ちはだかります。89式小銃とは異なり、順番は一応「ア・タ・レ」のとおり。 自分も最初に手にしたときUZIなどと同じ感覚で普通にセーフティを動かそうとしたところ…あれ全然動かない(汗)。 恥を忍んで説明役の隊員さんに聞くと「これは押し上げながら切り替えるんです」とのこと。 実演も交え教えて頂きましたが、ご覧の通り現職の隊員さんですら力を込めて親指で動かすくらい 固くて一苦労です。これはCQBにも共通する点ですが、自衛用のサバイバルウェポンとして使うのであれば、 敵に遭遇したとっさの状況で瞬時にセーフティを解除して反撃の挙に転じなくてはなりません。 その点から鑑みても、やはりコイツの採用には疑問符大です。

9mm機関けん銃

▲上部コッキングレバーを引いたところ。同系サブマシンガンのUZIやイングラムと同じく撃発機構は オープンボルト方式であるため、ボルトが後退したこのままの状態で止まります。 刻印などが刻まれた表面とは異なり、裏面はまた違った印象でなんかSFモノの漫画やアニメに出てきそうな シンプルそうで複雑なデティール。他に類を見ないメチャ長いフラッシュハイダーとレシーバー前方に 不自然に飛び出したフォアグリップの組み合わせが何とも言い難いイメージを生み出しているようです。 あのイングラムですら伸縮式の簡易ストックを標準装備しているのに、なぜにストックを付けなかった のか大いに疑問です。この点は開発当時ストックを付けると拳銃の範疇を超えてしまうため、採用でき なかったという苦肉の策説が有力。「じゃあ初っ端からこんな無用のデカブツじゃなくて多弾数のダブルカラムマガジン を装備した拳銃(SIG P226とか)でいいじゃねぇか!」と思ってしまったり…。

9mm機関けん銃

▲エジェクションポート(排莢孔)付近のアップ。黒光りしたフィーディングランプが見えます。

62式7.62mm機関銃

Sumitomo NTK-62

62式7.62mm機関銃

▲あぁこれはもう。。。何か中東のイスラム原理主義勢力から接収した旧ソ連製の旧式マシンガン のように見えるコイツは62式7.62mm機関銃。陸自が採用する国産欠陥兵器を代表する装備のひとつとして有名です。 採用から半世紀近くが経とうとする現在でも何の改善改良もなく依然として現役。 64式小銃と同様に部品点数が多く部品の脱落や作動不良は日常茶飯事、斉射による強力な弾幕を生み出す ことが第一義ともいえる機関銃でありながら、継続して連射ができないという致命的なオチを有します。 その結果、現場の隊員からは“62式単発機関銃”と揶揄されるほど。 ちなみに一丁のお値段は約200万円です。

62式7.62mm機関銃

▲レシーバー上部のフィードカバーを開けてもらったところ。一応ベルト給弾式で使用弾薬は64式小銃と 完全互換であるNATO規格準拠の7.62mm弱装弾。開発当時は軽機関銃と重機関銃の中間を占める汎用機関銃として 採用されたものの、時代の趨勢から現在では後継機種として導入した下記の5.56mm弾薬準拠のMINIMIに順次代替中です。 しかし僅か2mm弱の口径の違いと言えども5.56mm弾と7.62mm弾では射程・威力ともに雲泥の差があり、歩兵携行用 の機関銃を本来分隊支援火器であるMINIMI一辺倒にする運用もある種危険な話。 かと言って連射のできないヘッポコ機関銃を装備しても意味はなく、やはり米軍のようにNATO加盟各国で長年採用 されている信頼性の高いFN MAGを採用すべきでしょう。同じFN社製のMINIMIは既にライセンス生産してるんだから、 いい加減にMAGも導入して欲しいものです。あと脚付きの機関銃は弱装弾である必要性ってあるんでしょうか?

5.56mm機関銃MINIMI

Fabrique Nationale de Herstal Mini Mitrailleuse

5.56mm機関銃 MINIMI

▲欠陥兵器のオンパレードが続き(失礼!)愚痴ばかりこぼしましが、ようやく世界標準の正統派タクティカルウェポン に遭遇。米軍を始め西側各国で採用されている傑作機種ベルギーFN社製のSAW(分隊支援火器)MINIMIを ライセンス生産した国産版のMINIMIです。

5.56mm機関銃 MINIMI

▲レシーバー本体のアップ。先述の欠陥兵器62式7.62mm機関銃ではさすがにキツイということで、先んじて導入した 米軍に倣って陸自の普通科部隊を中心に1993年から調達を開始し、現在では陸海空の三自衛隊全てで装備されています。 疑問符大なものが多い国産火器と異なり、世界最強を誇る米軍によりソマリアやイラクなどの過酷な環境において膨大な バトルプルーフが成されてきたため、その信頼性の高さは言うに及ばず採用は大賛成。

5.56mm機関銃 MINIMI

▲レシーバー上部の給弾用フィードカバーを開けてもらったところ。本来は5.56mm弾の200連ベルトリンクを収納した ボックスマガジンからの分離式メタルベルトリンク給弾式ですが、他のスタンダードな機関銃と異なり分隊支援火器という性格上、 緊急時にはNATO加盟国の暗黙の了解である盟主アメリカ軍M16系統や同型の89式小銃の30連/20連マガジンを装備して の射撃も可能です。射撃時の発射速度(サイクル)はベルトリンク装備時で毎分約700発、30連マガジン装備で 毎分約1,000発です。有効射程は89式小銃と同じ5.56mmNATO弾薬に準拠しているので、概ねアサルトライフルと同等 の400m〜600m程度が妥当。

5.56mm機関銃 MINIMI

▲こちらはトリガーとセーフティ付近のアップ。斉射を目的とした機関銃なので当然のことながらセミ・フル の切り替えはなく射撃は常にフルオートオンリー、純粋な押しボタンタイプの安全装置のみが備えられています。 レシーバー側面には“5.56mm機関銃 MINIMI”の刻印が読み取れます。製造年を表す刻印からこれは2000年9月に 製造されたもののようです。

5.56mm機関銃 MINIMI

▲レシーバー上面にあるリアサイトのアップ。中央は小さな穴が開けられたピープタイプ。

5.56mm機関銃 MINIMI

▲こちらは前部にあるフロントサイトのアップ。MP5などと同じくリングガードが特徴的です。

84mm無反動砲

Carl Gustav recoilless rifle

84mm無反動砲

▲銃火器に続いては個人携行が可能な最大の火力のひとつである84mm無反動砲・通称“カールグスタフ”またの名を “カール君”。元々は60年以上前に北欧スウェーデンにて開発された個人運用可能な肩撃ち式の携行無反動砲 で、後に軽量化などの改良が施され現在では米軍を始めとしてNATO加盟各国にて制式採用されている軽量火砲の 傑作モデルのひとつです。自衛隊では1979年から輸入を開始し、後に89式小銃などの製造を請け負う豊和工業 がライセンス生産を行い現在でも陸自の普通科や施設科などに現行装備されています。 カールグスタフは他の多くの使い捨て携行対戦車火器と異なり、発射筒自体は何度でも使い回せるため任務の 用途に応じて様々な弾種を使い分けることが可能なのが特徴のひとつです。 自衛隊では榴弾・対戦車榴弾・照明弾・発煙弾の4種類を運用しており、本来の対戦車任務に限らず多目的な 運用が可能。榴弾を射出した場合の有効射程は約1,000m。 携行式といっても本体重量は約16kgもあるため、実際に肩に担ぐと本当に重いこと。 戦闘装着セットを着たうえに、こいつを担いで急峻な山中を延々と行軍するなんて考えただけでも 恐ろしいです(汗)。担当の砲主の方には頭が下がります。

84mm無反動砲

▲砲身内のアップ。説明の自衛官の方も仰っていましたが内部のライフリングは24条右回りで砲身は特殊鋼製。 砲口右側に見えるのはフロントサイトですが、通常は照準眼鏡を装着してより精密な照準を行うため 標準装備のアイアンサイトは普段は使わないそうです。

110mm個人携帯対戦車弾

Light-weight Anti-tank Munition

110mm個人携帯対戦車弾

▲続いてこちらは110mm個人携帯対戦車弾。 “Light-weight Anti-tank Munition”の頭文字をなぞってLAMの略称で呼ばれています。 元々はドイツ連邦軍が1990年代初頭に制式採用した無誘導のロケット噴進弾を肩撃ちで発射する 軽便な対戦車火器で愛称は“パンツァーファウスト3”、さしずめ西側版のRPG-7といったところでしょうか。 先述の汎用性の利くカールグスタフとは異なり、照準器以外の発射筒は一回ポッキリの使い捨て式で、セットされている弾種 も対戦車榴弾のみと運用的には装甲目標を相手にした純粋な対戦車火器という存在。有効射程は固定目標で約400m、 移動目標に対しては約300m。

110mm個人携帯対戦車弾

▲ハンドグリップ周辺のトリガーと安全装置のアップ。さすが本家ドイツ製ということもあって安全装置は 同じくドイツが誇る総合銃器メーカーH&K社製のG3アサルトライフルや初期型のMP5サブマシンガンに類似した デザインを採用しており、操作性の高さはお墨付き。

110mm個人携帯対戦車弾

▲左から左手保持用のグリップ、中央が右手保持用のグリップ、後ろが肩当て保持用のショルダーストックで 全て画像のように折り畳み可能。また中央の右手保持用のグリップは安全装置と連動しており、このように 折り畳んだ場合は強制的に安全装置が機能します。
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