平成23年8月27日 陸上自衛隊 平成23年度富士総合火力演習(その2)

イベントリポート

Event Report

CH-47J 大型輸送ヘリコプター

Kawasaki CH-47J Chinook heavy-lift helicopter

2011年8月27日 陸上自衛隊 平成23年度富士総合火力演習

▲ヘリボン行動の開始に伴い、CH-47J大型輸送ヘリコプターが飛来。

2011年8月27日 陸上自衛隊 平成23年度富士総合火力演習

▲地上十数メートルの地点でホバリングし、後部ランプからファストロープを地上に垂らします。

2011年8月27日 陸上自衛隊 平成23年度富士総合火力演習

▲そして2本のファストロープを使って、次々にバラクラバを着用した完全武装の隊員が地上に降下します。

2011年8月27日 陸上自衛隊 平成23年度富士総合火力演習

▲映画「ブラックホークダウン」で有名になったファストロープ降下は、専用の降下器具を介する従来のリペリング降下に対して、 ロープにつかまるだけで降下器具の着脱動作等が不要であるため、迅速な敵地進出が可能となっています。 反面、ロープに体を固定する安全器具が一切ないことから一歩間違えると、劇中のように墜落の危険性も極めて高いため、 ファストロープの実施には高度な技量と訓練が必須となります。

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▲ファストロープ実施後、CH-47Jは会場上空で反転。

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▲敵地離脱手法の一種であるエキストラクションロープにより、隊員数名を一気に回収します。

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▲迅速な回収が可能な反面、格好の標的になりやすいことから、隊員は地上の全方位を警戒しています。

110mm個人携帯対戦車弾

Light-weight Anti-tank Munition

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▲続いて110mm個人携帯対戦車弾(LAM)の実弾射撃。 LAMはドイツのダイナマイト・ノーベル社製「パンツァーファウスト3」を日本国内でライセンス生産した使い捨ての肩撃ち式対戦車ロケット弾です。

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▲「ブシュー!」という飛翔音の後、目標へ着弾。有効射程は固定目標で約400m、移動目標で約300mです。

対人狙撃銃

M24 SWS(Sniper Weapon System)

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▲陸上自衛隊では平成14年度から対人狙撃銃の名称で米国の主要銃器メーカーであるレミントン・アームズ社製のボルトアクション・スナイパーライフル M24 SWS(Sniper Weapon System)をFMS(対外有償軍事援助)で導入しています。 従来、陸上自衛隊では64式7.62mm小銃に専用の照準眼鏡(スコープ)を装着して簡易的な狙撃銃として運用してきましたが、 64式7.62mm小銃の減数や2000年代以降に重視 されるようになった対テロ・対ゲリラコマンド作戦における本格的な狙撃任務には適さなくなったため、 本銃が選定導入されました。 調達価格は対人狙撃銃本体や照準眼鏡、二脚(バイボッド)、運用に必要なメンテナンス・クリーニングキット、 ペリカン製の大型ハードガンケースなど 狙撃任務に必要な周辺パーツがセットにって約60万円となっています。

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▲陸上自衛隊には対人狙撃銃に導入に伴って、全国の普通科連隊に定員6名から成る狙撃班が創設されました。 狙撃班は諸外国の軍・警察所属のスナイパーユニットと同じく、 射手(スナイパー)と観測手(スポッター)の二人一組で構成され、 状況に応じてギリースーツを含む隠密行動用戦闘装着セットを装着して擬装します。 観測手は射距離や風速等の環境観測を行い、狙撃手に対して狙撃に必要な情報を与え、目標や弾着の観測、戦果確認、狙撃手の援護・護衛など狙撃手をサポートするため、 多種多様な任務を兼務し、状況によっては観測手が狙撃を行う場合もあります。 今回はギリースーツを着用した射手と観測手で狙撃を実施しました。

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▲今回の射撃展示では、約500m遠方に設置された車両内の人像標的の頭部を見事に撃ち抜きました。

06式小銃てき弾

Type 06 rifle grenade

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▲89式5.56mm小銃の銃口に装着された国産の22mmライフルグレネードである06式小銃てき弾(模擬弾)。製造は空調・化学品の最大手であるダイキン工業。 89式5.56mm小銃と64式7.62mm小銃の銃口部に装着し、小銃の実弾を用いて発射する弾丸トラップ式のライフルグレネードで、最大射程は約400mと推測されています。

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▲米軍をはじめとした欧米各国では、M203グレネードランチャーのようなアドオン式グレネードランチャーが主流ですが、 この方式は小銃に発射機を常時装着する必要があり、てき弾射手が固定されるというデメリットに加え、射程や命中精度、不発率、運用上の安全性などを総合的に鑑みて、 あえて自衛隊ではライフルグレネードを採用した経緯があります。なお、弾種はHEAT(成形炸薬弾)と榴弾が用意されているとされています。

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▲近距離・普通科火力の部において実施された89式5.56mm小銃と5.56mm機関銃MINIMIの一斉射の様子。

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▲84mm無反動砲(カールグスタフM2)による発煙弾射撃。他にも対戦車榴弾・榴弾・照明弾が存在します。

OH-1 観測ヘリコプター

Kawasaki OH-1 Ninja reconnaissance helicopter

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▲近距離火力・ヘリ火力の部において登場した観測ヘリコプターOH-1。 ヒューズOH-6Dカイユースの後継機として、川崎重工業を中心に開発されたOH-1は、現代の観測(偵察)ヘリコプターに必要とされる 優れた運動性能と生存性能、偵察機能を両立した純国産機です。 高機動を実現する強力なエンジンに加え、操縦応答性能に優れたヒンジレス(無関節)ハブローターシステムを採用し、 通常のヘリコプターでは難しい背面飛行などのアクロバット飛行も可能となっています。 会場に飛来した直後、まずは垂直上昇を披露。

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▲垂直上昇の後、急降下。UH-1などに比べ、「ブーン」という響きの少ない特徴的なローター音が特徴的です。

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▲コックピットのタンデム配置とスリムな胴体、武装用スタブウィングの装備から一見すると攻撃ヘリコプターと見紛う機影ですが、 これは通常の攻撃ヘリコプターと同様にレーダー反射面積と目視による被発見率を抑え、前方から射撃された際の被弾率を低減させる ことを目的とし、生存性と運動性を優先した結果です。

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▲左右のスタブウィングは、高速飛行時の安定性を高め、4箇所のハードポイントには予備燃料用の増槽2基、 91式携帯地対空誘導弾を流用した空対空ミサイル2発が内蔵された箱型発射機を左右に備え、 計4発の自衛用ミサイルを武装に有します。 これにより万一、敵航空機に発見された場合でも対応が可能となります。

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▲特徴的な後部のテールローターは、機内に埋め込まれたダクテッド方式を採用しており、観測ヘリコプターが主眼とする地面に近い極低空飛行時において 樹木などに直接接触する危険性を低減しています。

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▲OH-1はコンピュータ制御による優れたアビオニクスシステムを有し、パイロットは操縦桿から手を離しても空中静止装置の働きにより、 自動的に安定したホバリングの継続が可能です。

AH-1S 対戦車ヘリコプター

Fuji AH-1S Cobra attack helicopter

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▲陸自の主力対戦車(攻撃)ヘリコプターであるAH-1S。1980年代に自衛隊が始めて導入した本格的攻撃ヘリコプターで、 1998年に最終調達が終了し、10年以上が経過した現在でも約70機が運用されています。

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▲左右のスタブウィングのハードポイントに装備されたAH-1Sの主力武装であるTOW(トウ)対戦車ミサイルの実弾射撃。 TOWは米国をはじめとした多数の西側各国で採用されている代表的な有線誘導方式の対戦車ミサイルであり、 “Tube-launched, Optically-tracked, Wire-guided(発射筒発射、光学追跡、有線誘導)”の略称で、 ミサイル本体はチューブ型のコンテナ内に格納されており、 発射機にチューブごと装着して運用します。 TOWは主要コンポーネントを共通化した特徴によって、攻撃ヘリ搭載型、車載型、地上設置型など様々な発射機から運用が可能となっています。 ただし、標的着弾まで射手による照準誘導が必要であるなど、対戦車ミサイルの世代としては旧式化しており、 米軍などではAH-64やAH-1W/Zなどで運用されているヘルファイア対戦車ミサイルなどのファイア・アンド・フォーゲット(撃ち放し能力)を有する次世代型への代替が始まっています。

AH-1S 対戦車ヘリコプター TOW(トウ)対戦車ミサイル発射

Fuji AH-1S Cobra attack helicopter

▲TOWの実弾発射が行われましたが、発射後に終末誘導不能となり、残念ながら発射失敗となりました。

AH-64D 戦闘ヘリコプター

Fuji AH-64D Apache Longbow attack helicopter

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▲今回の個人的本命であるAH-64Dアパッチ・ロングボウ戦闘ヘリコプター。 原型のAH-64アパッチシリーズは、米国のマクドネル・ダグラス(現ボーイング)社が開発した言わずと知れた世界最強の勇名を馳せる戦闘ヘリコプターです。 AH-64Dは、AH-64Aのメインローター上面にロングボウ火器管制レーダーを搭載し、 C4I(指揮・統制・通信・コンピュータ・情報)システムを中心としたアビオニクスの強化など大幅な能力向上を図った派生型です。 主要武装のヘルファイア対戦車ミサイルとの組み合わせにより、非常に高い戦闘能力を有します。

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▲長年、陸自の主力対戦車(攻撃)ヘリコプターには1980年代から調達が開始され、富士重工業(機体)と川崎重工業(エンジン)によるライセンス生産によって 90機が生産された上記のAH-1Sが使用されてきました。 現在では運用寿命を迎えた初期導入時の機体から順次退役が始まっており、AH-1Sの保有数は70機前後になっています。 2001年、AH-1Sの後継機種としてAH-64Dアパッチ・ロングボウの制式採用が決定し、富士重工業によって国内でのライセンス生産が開始されました。 しかし、その数年後に米本国で日本が採用したシリーズと同じAH-64DブロックIIの生産が終了した結果、部品調達や1機50億円以上という高騰する調達費等の問題で日本国内でのライセンス生産の継続が不可能となり、 防衛省は最終的に僅か13機の生産で調達を打ち切ってしまいました。 当初、AH-1Sの代替として60機以上の生産を予定していたAH-64Dの後継機種も未定のままであり、当分の間は順次退役が進むAH-1Sを主力攻撃ヘリコプターとして使い倒すようです。

2011年8月27日 陸上自衛隊 平成23年度富士総合火力演習

▲メインローターマスト上面に装備されたAN/APG-78ロングボウ火器管制ミリ波レーダーがAH-64D最大の特徴です。 日本のマニアの間では、その鏡餅のような特徴的なレドームの形から「お餅」などとも呼ばれています。 空対空モード、空対地モードの2種類の索敵モードを備え、同時に256個の補足目標に対して個別に高度な情報処理が可能で、 コンピュータが総合的に脅威の程度を評定し、攻撃対処のための優先順位をコックピットのモニターに表示できます。 また、これらの情報は専用の高速データ通信による戦術データリンクシステムを用いて、他の機体や地上部隊などと共有することが可能で、 最新のC4Iシステムを駆使した効率的な作戦行動が行えます。 重武装ながら高機動を発揮できる強力なエンジン、強力な索敵処理能力を有する高性能レーダーシステム、高度な情報システムとリンクした強力な武装、 これら全てを備えたAH-64Dは、正に現代において「空飛ぶ重戦車」の異名のとおり、最強の戦闘ヘリコプターのひとつと言っても過言ではないのです。

2011年8月27日 陸上自衛隊 平成23年度富士総合火力演習

▲AH-64Dは、固定武装にM230A1 30mm機関砲、左右のスタブウェイングの4箇所の各ハードポイントには、 AGM-114 ヘルファイア対戦車ミサイル、ハイドラ70ロケット弾ポッドの主要武装に加え、 自衛隊納入機種向けにAH-64シリーズでは初めて装備されたAIM-92スティンガー空対空ミサイルを4発装備可能となっています。 元々、スティンガーミサイルは携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)として開発されましたが、AH-64Dでは敵航空機に発見された際の短射程の自衛用ミサイルとして運用されています。

2011年8月27日 陸上自衛隊 平成23年度富士総合火力演習

▲30mm機関砲の実弾射撃実施のため、射撃位置でホバリングを実施するAH-64D。

M230 30mm機関砲

M230 30x113mm Chain Gun

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▲AH-64Dが機首下部に備える30mm機関砲(M230A1)での実弾射撃の様子。 M230は、AH-64向けの固定武装として開発された30x113mm機関砲弾に準拠した単銃身機関砲で、作動に電気モーターの駆動による外部動力方式を採用したチェーンガンの一種です。 発射速度は毎分625発、有効射程は約1,500mで最大射程は約4,500mに達し、主に非装甲車両や軽装甲車両、対人目標等に対する攻撃で絶大な威力を発揮します。

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