建造物・車両・航空機・船舶など、人工物への突入を余儀なくされる対テロ特殊部隊や警察SWATチームにとって、 その進路を切り開く各種エントリー・ツールは作戦遂行上、必要不可欠な存在である。 特殊作戦の黎明期、これらの任務には市販されている民生品の工具などが利用されていたが、 2000年代ころから各国のタクティカル・ギア・メーカーが特殊作戦での使用を想定したモディファイ(低視認性カラーリングや絶縁加工などの特殊加工)を加え、 “タクティカル・エントリー・ツール”と称する様々なモデルをラインナップしている(これらは軍・警察向けの特殊製品で基本的に民間向けに販売されることはない)。 その中でも米国の大手総合タクティカル・ギア・メーカーとして有名なBLACKHAWK(ブラックホーク)社は、 “DYNAMIC ENTRY(ダイナミック・エントリー)”というブランドで、任務に応じた数十種類にわたる各種タクティカル・エントリー・ツール・システムを展開している。 1993年、米国海軍特殊部隊SEALsに所属していた経歴を持つアイク・ノエルを中心に設立された同社は、 高強度ナイロン製のロード・ベアリング・システムをはじめとした高品質なタクティカル・ギアの開発により、各国のタクティカル・ユーザーから高い信頼を得た。 2018年時点で同社は、同じく大手総合タクティカル・ギア・メーカーとして有名なEAGLE(イーグル)社を含む30以上のアウトドアスポーツ用品ブランドを傘下に擁する国際的なアウトドア用品商社“VISTA OUTDOOR”のブランドのひとつとなっている。 同社のタクティカル・エントリー・ツールは米国をはじめとした各国の軍・警察・法執行関係機関など、数多くのタクティカル・ユーザーに採用され、 市街地戦闘任務に従事する陸上自衛隊普通科部隊や各都道府県警察本部警備部機動隊に所属する特殊急襲部隊(SAT)、同刑事部に所属する特殊犯捜査係(SIT)突入班など、我が国の官公庁でも採用が確認されている。
米国の大手総合タクティカル・ギア・メーカーであるBLACKHAWK(ブラックホーク)社製のダイナミック・エントリー・ツール“THUNDERMAUL(サンダーモール)”。 同モデルはドアや窓の破壊などに使用されるスレッジ・ハンマー(大槌)機能と、斧の機能をコンパクトに一体化したタクティカル・モールだ。 ハンマーヘッド部分には熱処理された高剛性の特殊炭素鋼が用いられており、幾度の強力な打撃にも耐える堅牢さを確保している。 また、握り易い特徴的デザインの“シュアグリップ・ハンドル・システム”の採用により、重量のあるハンマーヘッドを大きく振りかざしても 確実な保持と対象物の破壊が可能だ。他のシリーズと同様、グリップには交流電圧10万ボルトまで耐えられる 非伝導性素材によるファイバー・グラス・ハンドル・システムが施されており、緊急時には配線や配電盤の破壊も可能である。 同モデルは同社の代表的ブリーチャー向けパッケージである“TACTICAL BACKPACK KIT(タクティカル・バックパック・キット)”を構成するサンダースレッジ・シリーズの代表的モデルであり、 世界各国の軍・警察・法執行関係機関所属のタクティカル・ユーザーに採用されている。
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