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MSA Advanced Combat Helmet TC 2000

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

エム・エス・エー / マイン・セーフティー・アプライアンス

MSA / Mine Safety Appliances

MSA(Mine Safety Appliance Incorporated)は、 鉱山労働者の使用していた燃料式ランプに起因するメタン関連爆発事故を防止することを目的とした電池駆動式ヘッドランプを開発するため、 発明王として有名なトーマス・エジソンによる援助を受け、1914年に米国ペンシルバニア州ピッツバーグの郊外にあるクランベリーを拠点に設立された。 今日、米国を代表する大手総合保安用品メーカーとして成長した同社は、合計11億ドル以上の売上高(2013年)を誇り、関連企業を含め全世界で5,300人以上の従業員を雇用している。 同社の主力製品は、ガス監視及び検知器具、フィルター式レスピレーター、ガスマスク、消防士向け自給式呼吸装置(SCBA)、消防士向けヘルメット、熱線画像カメラ、 軍・法執行関係機関向けボディーアーマー及びバリスティック・ヘルメットを含む防弾装具、コミュニケーション・デバイス・システム、 一般的な保安ヘルメットを含む産業用保安用品だ。 建設、軍隊、消防、化学工業、石油、ガス、一般産業をキーマーケットとし、様々な危険にさらされる労働者の保護を目的に、高度な保安用品の提供を目指したセーフティー・カンパニーである。 同社は2015年時点で、MSAノースアメリカとMSAインターナショナルの二つの事業セグメントを有しており、米国、欧州、アジア、ラテンアメリカで製造販売事業を展開し、 我が国を含む世界140カ国以上に製品を供給している。 ミリタリーマーケットにおいては、米軍制式採用のACH(Advanced Combat Helmet)をはじめとした高性能の軍用バリスティック・ヘルメットやタクティカル・ボディーアーマー・システム、 通信用ヘッドセットに代表される軍用コミュニケーション・デバイス・システムの製造で大きなシェアを誇る。

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

Advanced Combat Helmet TC 2000

ACH(Advanced Combat Helmet:高性能戦闘用ヘルメット)は、2000年代初頭に米陸軍によって開発・制式採用されたバリスティック・ヘルメットであり、 1980年代に米軍に制式作用されたPASGT(Personnel Armor System for Ground Troops:地上部隊個人防護システム)ヘルメットの更新モデルとして米陸軍を中心に配備された。 ACHは、米陸軍特殊作戦コマンド(United States Army Special Operations Command:USASOC)の要望で開発されたMICH(Modular Integrated Communications Helmet)を原型としており、 MICHの最大の特徴である通信用ヘッドセットをはじめとした各種コミュニケーション・デバイス・システムとの運用効率性の高さを引き継ぎ、 装備資機材の研究開発を担う米陸軍兵士システムセンター(United States Army Soldier Systems Center:SSC)において開発された。 米軍納入向けACHの製造はMSA社のほか、Gentex社、SDS社、イスラエルのRabintex社が請け負っている。 アウターシェル本体は、ケブラーとトワロンを主体とした軽量な高性能アラミド系繊維で成形され、アーマー・ピアッシング(徹甲弾)などの特殊弾薬を除き、 SMGなどから発射される高初速の9oパラベラムFMJ弾や.44マグナム弾など大抵の拳銃弾の貫徹を防ぐNIJ規格レベルIIIAの抗弾能力を有している。 本体重量(MSA社製TC 2000)はサイズ別にミディアムが約1,360g、ラージが約1,470g、Xラージで約1,540gだ。 サスペンション・システムには安定性と快適性に優れた4ポイント・アジャスタブル・チンストラップ・リテンション・システムを備え、 インナーデザインには、使用者に応じて任意にレイアウト変更が可能な着脱式のクッションパッド方式を採用しているため、通信用ヘッドセットなどとの併用も容易である。 同社のACH TC 2000シリーズには、標準のTC 2000のほかに側頭部が露出したフル・イヤー・カットモデルのTC 2001、ハーフ・カット・モデルのTC 2002がラインナップされている。 米陸軍において従来のPASGTヘルメットを代替して標準装備となったMICH/ACHは、 米軍に倣い20年近くにわたって各国の軍用バリスティック・ヘルメットで主流となっていたPASGTタイプヘルメットの更新モデルとして、 各国の次世代バリスティック・ヘルメットの開発に大きな影響を与え、各国の防弾装具メーカーでMICH/ACHデザインに倣ったモデルの開発が進んだ。 MSA社などが製造するACH TC 2000シリーズは、その基本性能の高さからミリタリーユースだけでなく、全米の警察SWATをはじめとした各種法執行関係機関所属のタクティカルユースにも販売され、 旧来のPASGTタイプヘルメットとの代替が進んでいる。 なお、米軍ではACHの後継モデルとして、2007年からECH(Enhanced Combat Helmet)の研究開発が進んでおり、米陸軍・海軍・海兵隊において2010年代中の実戦配備が予定されている。 帽体形状やクッションパッド方式のインナーシステムなど基本的なデザインはACHを踏襲しながら、ECHでは抗弾素材に最新の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を採用したことで、 軽量性を保ちながら従来のバリスティック・ヘルメットでは実現の難しかった高初速ライフル弾の貫徹を防ぐ優れた防護能力を有している。

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

▲顎が接するチンハーネスは樹脂製のチンカップなどを備えない伝統的な仕様だが、 これはガスマスクなどを装面する際にチンカップの干渉を考慮したものだ。 樹脂製のファステックスが装備されたクイック・リリース・タイプのため、 厚手の手袋などを着用していても迅速な着脱が可能である。

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

▲ACHのアウターシェルデザインは、1980年代の米軍による制式採用から世界的に主流になったPASGT(Personnel Armor System for Ground Troops:地上部隊個人防護システム)ヘルメットのデザインに比べ、 人間工学に即した実戦的な改良が施されている。 PASGTヘルメットに設けられていた前頭部のツバが廃されたことで、前方の視認性が向上し、 側頭部も耳が一部露出するまで浅くなったため、周囲の聴音性能が増している。

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

▲安定性と快適性に優れた4ポイント・アジャスタブル・チンストラップ・リテンション・システムは、着用者に合わせて各部の微調整が可能だ。 4点支持方式のため、NVD(暗視装置)やバリスティック・フェイス・シールドなどの重量物を装着しても安定性を損なうことはない。 また、各種タクティカル・ゴーグルやガスマスクとの併用も考慮され、 さらに普及率の増したPELTOR(ぺルター)社製COMTAC(コムタック)シリーズをはじめとした各種コミュニケーション・システム・ツールも無理なく運用可能である。

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▲後頭部には抗菌吸湿発散素材から成る襟首用のクッションパッドが設けられており、高い安定性と快適性を提供する。

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

▲チンハーネスには、米国のナショナル・モールディング(National Molding)社製のファステックスが用いられ、迅速な着脱が可能だ。

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

▲帽体前頭部に装着しているのは、FASTバリスティック・ヘルメット・シリーズなど特殊部隊向け軽量高性能バリスティック・ヘルメットの製造で有名な米国OPS-CORE(オプス・コア)社製のVAS(Visual Augmentation System)シュラウド。 シュラウド本体は、パウダーコート(粉体塗装)処理済の軽量な高強度アルミニウム合金製であり、 重量34gと従来のNVD(暗視装置)シュラウドに比べて軽量なのが特徴だ。販売価格もNorotos(ノロトス)社やWILCOX(ウィルコックス)社などの他社同一製品に比べて最も安く、 警察SWATをはじめとした米国の法執行関係機関でも普及率が高い。 帽体の3箇所に穴を開け、付属のネジでシュラウドを固定する方式で、本体カラーはブラックのほか、コヨーテタン、グリーンがラインナップされている。

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▲VASシュラウドに専用マウント・システムを介して単眼方式のNVD(AN/PVS-14)を装着した状態。

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▲ヘッドセットなどの各種コミュニケーション・デバイス・システムとの併用を設計段階から考慮したACHシリーズでは、 2000年代初頭から米軍などのミリタリーユースで普及が始まったPELTOR(3M Peltor Communication Solutions)社製COMTAC(コムタック)シリーズなど大型のヘッドセット・システムとの併用も容易になった(画像のモデルは警察SWAT向けに販売されている第三世代COMTACシリーズ“SWAT-TAC III ACH”)。 COMTACシリーズは通常の通信機能に加え、銃声や爆発音など一定音量以上のハザード・ノイズのみを電子的に遮断し、 通常の会話など周囲の環境音のみを出力するノイズ・キャンセリング機能を有しており、 通信機能とイヤー・プロテクション機能の両方を併せ持つ。 通常のCOMTACは大型のヘッドバンドが装備されているため、従来主流のPASGTヘルメットではインナーシステムとヘッドバンドが干渉して運用に支障があったが、 インナーシステムに着脱可能な複数のクッションパッドを採用したACHでは、ヘッドバンドが干渉する部分のみパッドを取り外すことが可能で着用時の違和感がなくなった。

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

▲NVDを跳ね上げた状態。2点支持方式のPASGTヘルメットに比べ、このような状態でも4点支持方式のACHは高い安定性を発揮する。

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▲従来のPASGTヘルメットがインナーシステムに伝統的なハンモック方式を採用していたのに対し、ACHはインナーシステムに着脱可能なクッションパッド方式を採用した。 軽量な低反発性素材が内包されたクッションパッドは衝撃緩和能力に優れ、頭部が接する表面側が吸湿性素材、帽体が接する裏面側がパイルアンドフック(面ファスナー)のメス仕様となっており、 自由なレイアウト構成が可能だ。 従来主流のハンモック方式に比べ、クッションパッド方式の最大のメリットは、着脱可能なパッドのレイアウトを変更することで、 現代戦闘に必須である各種コミュニケーション・デバイス・システムの効率的運用が可能となった点だ。 また、頭部と接するパッドが着脱式となったことで、着用者の頭部形状に合わせたレイアウトの微調整が容易になり、着用時の快適性や衛生面でも優れているのが特徴である。

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▲帽体からクッションパッドを全て取り外した状態。帽体内側には、パッド固定用のパイルアンドフック(面ファスナー)のオス側が装着されている。

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▲標準仕様のクッションパッドは、サイズ別に合計7枚から構成される。着用者に応じて、自由度の高い任意のレイアウトが可能だ。

MSA ACH(アドバンスド・コンバット・ヘルメット)TC 2000

▲帽体内側に貼付された製品ラベル。 メーカー名であるMSAの表記と製品名、シリアルナンバー、サイズ、パテント情報が記載されている。 なお、帽体のサイズはスモール、ミディアム、ラージ、Xラージがラインナップされ、 帽体のカラーはブラックのほかにタン、ODグリーンの3種類が存在する。

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▲米陸軍において従来のPASGTヘルメットを代替して標準装備となったMICH/ACHは、 米軍に倣い20年近くにわたって各国の軍用バリスティック・ヘルメットで主流となっていたPASGTタイプヘルメットの更新モデルとして、 各国の次世代バリスティック・ヘルメットの開発に大きな影響を与え、各国の防弾装具メーカーでMICH/ACHデザインに倣ったモデルの開発が進んだ。 MSA社などが製造するACH TC-2000シリーズは、その基本性能の高さからミリタリーユースだけでなく、全米の警察SWATをはじめとした各種法執行関係機関所属のタクティカルユースにも販売され、 旧来のPASGTタイプヘルメットとの代替が進んでいる。 各国の軍・警察対テロ特殊部隊のほか、我が国においても海上保安庁などの法執行関係機関において、MICH/ACHタイプのデザインを採用したバリスティック・ヘルメットの採用が確認されている。

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