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タクティカル・イルミネーション・ツール(タクティカル・フラッシュライト / ウェポン・ライト)

Tactical Illumination Tools / Tactical Flashlight / WeaponLights

タクティカル・イルミネーション・ツール(タクティカル・フラッシュライト / ウェポン・ライト)

軍・準軍事組織に所属する対テロ特殊部隊や警察SWATは、航空機内や船舶内、車両内や屋内等の閉所空間における 近接戦闘(CQB:Close Quarters Battle)に特化した組織である。 そして、CQBを専門とする特殊部隊が作戦を敢行するこれらの環境下には、非常に高い確率で ロウライト・コンディション(低光度環境)が存在する。 対テロ特殊部隊が専門とする人質救出作戦は、夜間や薄暗い明朝に決行されることが多く、人工物内への突入に際しては 対象施設の電源設備を切断し、テロリストの視覚を奪うのが常套手段である。 電源設備を切断せずとも、突入に際しての銃撃戦やフラッシュバン(特殊音響閃光手榴弾)等の 各種ディストラクション・デバイスの爆圧によって、室内の照明器具が破損し、照明を失う場合もある。 例え日中であったとしても照明の存在しない人工物内へ一歩足を踏み入れれば、そこにはロウライト・コンディションのリスクが 常に付きまとう。特に窓の少ない船舶内や地下室内等は、空間の状況把握が不可能な完全な暗闇である場合が多い。 このようなロウライト・コンディションに対応する最も端的な方法がフラッシュライト(懐中電灯)の携行である。 各国で対テロ特殊部隊の重要性が認識され始めた1980年代、従来の軍隊における伝統的な野戦では殆ど重視されてこなかった ロウライト・コンディションであったが、CQBにおけるロウライト・コンディションのリスクの高さに直面した これらの対テロ特殊部隊では、必然的にMP5サブマシンガン等のプライマリーウェポンにフラッシュライトが取り付けられた。 当初、その堅牢性と柔軟性の高さから米国の司法機関を中心に採用され、爆発的にシェアを広めていた米国マグ・インストルメント 社製のマグライトシリーズが用いられることが多かったが、大型で重量のあるマグライトはライフルやサブマシンガン等に装着される 場合が殆どで、ハンドガン等の小型の銃器には適さなかった。 タクティカル・イルミネーション・ツール(タクティカル・フラッシュライト / ウェポン・ライト) 1990年代に入ると対テロ作戦特殊部隊におけるフラッシュライトの運用に革命が起こる。 今日における高出力・大光量フラッシュライトの代名詞である米国レーザープロダクツ社(現シュアファイア社)製 “シュアファイア(SUREFIRE)”シリーズの台頭である。 シュアファイア・シリーズは、高電圧・高出力かつ高い安定性を備えた小型のCR123Aリチウムバッテリー を電源に採用することで、掌に収まるほど本体の小型化に成功しながら、高出力のハロゲンランプと 高精度リフレクターを組み合わせることで、マグライト等の従来の一般的なフラッシュライトに比較し、 小型軽量化による可搬性の向上と圧倒的な大光量という相反する条件を実現した。 このシュアファイアがもつ特性から生まれたのが『光を武器として利用する』という新たな戦術である。 人間は強力な光線を直視した際、眼球を保護するため反射的に目を閉じたり、光線から顔を背けるといった 反射行動を無意識にとってしまう。 また、眼球は脳機能と直結しており、光線によって視覚機能が幻惑(目潰し効果)されることで人間の思考能力と 身体機能は大きな制限を受ける。 従来のフラッシュライトの照明器具としての一義的な用途に加え、大光量の光線を制圧対象者に照射することで、 相手の視覚機能を幻惑し、思考停止と身体機能の制限により一時的に行動不能にさせることが 可能となったのだ。 フラッシュライトを戦術(タクティカル)の一部に取り込んだことから、シュアファイアに代表される 小型軽量な大出力フラッシュライトはタクティカルフラッシュライト(Tactical Flashlight)の別名でも知られるようになった。 シュアファイアは、従来のフラッシュライトと同じく手で保持するハンディライトシリーズのほか、 銃器に装着して運用することを目的にして専用開発されたウェポンライトシリーズも積極的に展開した。 ウェポンライトは、射撃時の振動や発熱に耐え、軍・警察の過酷な作戦に用いられるという特殊性から、通常のハンディライト 以上の耐久性や信頼性が要求される。 シュアファイアは、高い工作加工精度と高強度材料の採用、防水・防振構造の採用等により、これらの要求をクリアした。 さらに、ライフルやサブマシンガン、ショットガン、ハンドガンといった銃種ごとに対応した専用マウントに加え、ライトベゼルやバッテリーチューブをはじめとした各種コンポーネントをモジュール化したことで、 任務や作戦環境に応じた多種多様な組み合わせが可能となり、特殊作戦への対応の幅を広げた。 これにより、シュアファイアはタクティカルライト・ウェポンライトの市場において大きなシェアを獲得し、 各国のタクティカルオペレーターから絶大な信頼と支持を得るに至る。 シュアファイの登場により、第一線の対テロ特殊部隊のみならず、法執行機関やセキュリティなどの 幅広いタクティカルユースが積極的にタクティカルライトの導入を開始し、タクティカルライト・ テクニックとして効率的な運用手法を含めた実戦でのノウハウが徐々に蓄積されていった。 現在、軍・警察・PMC(民間軍事会社)の作戦行動に屋内での索敵や夜間行動などが加わり、 ロウライト・コンディションに遭遇する機会が従来に比べ、一層増加する 傾向にある。 そのため、特殊作戦を敢行する特殊部隊に限らず、軍の一般部隊や法執行関係者などにおいて もダットサイトを始めとした小火器用オプション・デバイス同様、 個人装備に タクティカルライトを加えることは現代戦闘の必須項目となりつつある。

タクティカル・イルミネーション・ツール(タクティカル・フラッシュライト / ウェポン・ライト)



シュアファイア / レーザー・プロダクツ

SUREFIRE / Laser Products
SUREFIRE(シュアフィア)モデル 628LM フォアエンド・ウェポン・ライト ■ SUREFIRE Model 628LM Forend WeaponLight for HK MP5 SMG

― シュアフィア M628LM フォアエンド・ウェポンライト
SUREFIRE(シュアフィア)モデル 628LM フォアエンド・ウェポン・ライト ■ SUREFIRE Model 900A-TN-RD Vertical Foregrip WeaponLight

― シュアフィア M900Aバーティカル・フォアグリップ・ウェポンライト


シュタイナー・イーオプティクス / レーザー・デバイシス

Steiner eOptics / Laser Devices
Laser Devices( レーザー・デバイシス)MP5SD タクティカル・ライト対応シングル・マウント ■ Laser Devices MP5SD Single Mount for Tactical Light

― レーザー・デバイシス MP5SD タクティカル・ライト対応シングル・マウント


SIG SAUER P226 / SUREFIRE 3V Weapon Light

▲レーザープロダクツ社製のウェポンライトを装着したSIG SAUER P226オートマチックピストル。 銃種ごとに専用設計されたライトマウントは、銃に特殊な加工を施すことなく、テイクダウンレバーなどを 専用の部品に交換するだけで装着可能なデザインとなっている。 CR123Aリチウムバッテリー1本(出力電圧3V)を内蔵し、電圧3Vに対応したP30バルブアッセンブリー (キセノンランプ)を搭載し、約20ルーメンの光束をもつ。

Beretta M92FS / SUREFIRE 3V Weapon Light

▲ライトマウントを交換することなく、モジュール化されたライトアッセンブリー部分を交換するだけで、 内蔵バッテリー2本(出力電圧3V)に対応したP60バルブアッセンブリー(光束65ルーメン)を運用することも可能である。 ライトの出力は強力になるが、バッテリーの倍増に伴いバッテリーチューブを追加するので、当然のことながら全長も増し、可搬性は低下する。 構成部品のモジュール化によって、ウェポンライトが必要とされる状況に応じた使い分けが可能だ。

Surefire Weapon Light System

▲1990年代に登場したレーザープロダクツ社製のウェポンライトを装着した各種オートマチックピストル。 2000年代以降、特殊部隊向けのコンバットピストルには、レールシステムの運用が不可分な要素となっているが、 1990年代当時はH&K社製のUSPなど一部の最新モデルを除き、ウェポンライトなどのオプションデバイスの運用に標準対応したピストルは普及していなかった。 そのため、レーザープロダクツ社は軍・警察向けに需要の高い銃種を中心に専用のライトマウントをラインアップし、 部隊で運用している既存の銃種へのウェポンライトの導入を容易にした。 ウェポンライトの心臓部であるベゼルアッセンブリーは容易に取り外し可能なようモジュール化され、 リチウムバッテリーの電圧(内蔵本数)ごとに3V(1本)/6V(2本)/9V(3本)に対応した高出力バルブ やレーザーサイトモジュールを運用することができる。 このモジュールシステムに使用される主要な構成部品や消耗部品は、ライフルやサブマシンガン、ショットガン、ハンドガンなど銃種が異なっても 専用マウントなどを除いて全て共通化しており、様々な作戦環境への対応や長期的運用を可能とした画期的な製品群であった。 1990年代には全米の警察SWATや軍特殊部隊において相次いで採用され、その後各国の軍・警察においても普及し、 ウェポンライトの普及において先駆的存在となった。

Surefire Weapon Light System

レーザーサイト

Laser Sight

レーザーサイト

レーザー(Laser)は、“Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(輻射の誘導放出による光増幅)”の頭文字をとった専門用語であり、 レーザー発振器によって光(電磁波)を増幅して生成された人工的な光である。 レーザー光線は、可視光や不可視光など様々な領域の電磁波の波長を一定に保ちながら照射することができ、指向性(直進性)と収束性に優れるという最大の 特徴をもっている。 この指向性に優れるというレーザー光線の特徴を利用した代表的なガンアクセサリーがレーザーサイト(レーザー照準器)である。 射撃のボアライン(軸線)に合致するよう銃器にレーザー発振器を装着し、遠方に照射されたレーザーの光点を射撃時の狙点として利用する。 レーザー光線は遠距離でも拡散しにくい高い直進性を保つため、その光点と射撃時の実際の着弾点が一致するように調整(ゼロイン)することで、銃に備わっているアイアンサイト を使用することなく、正確な射撃を可能とした。 H&K MP5A3 / SUREFIRE L72 Laser Sight レーザーの光点さえ確認できれば正確な射撃が可能となるため、スコープなど他の光学照準器を利用した射撃とは異なり、 ガスマスク装着時や腰撃ち姿勢を始めとして様々な射撃姿勢から自由度の高い射撃を行うことができる。 これは特に閉所空間における近接戦闘(CQB)を得意とする対テロ特殊部隊や警察SWATには、高いタクティカルアドバンテージ(戦術的優越性)であった。 レーザーの技術的実用化に目処がついたのは1960年代で、今日のように情報機器を始めとした民生分野の様々な場面でレーザーが用いられるようになったのは、 レーザーモジュールの小型軽量化と低価格化を実現した半導体レーザーが普及した1990年代以降である。 1980年代にはレーザーの照準器への応用について先見性を見出した米国のガンアクセサリーメーカーを中心に実用的なレーザーサイトが開発されていたが、 普及当初のレーザーサイトはガスレーザー発振器等を内蔵したことから大型で重量があり、主にライフルやサブマシンガンなどに装着して運用されることを想定していた。 1990年代には、半導体レーザーの技術革新により、レーザーサイトモジュールの小型軽量化に成功し、射手への負担軽減と同時に 殆どのハンドガンへもレーザーの装着が可能となった。 当初、黎明期にあるレーザーサイトは生産数も少なく非常に高額な製品であったことから、その有効性を認めた予算の潤沢な一部の対テロ特殊部隊や警察SWATにのみ採用されることが多かった。 しかし、半導体レーザーの普及と急速な低価格化により、特に2000年代以降は各国の様々なガンアクセサリーメーカーが多種多様なレーザーサイト関連製品を開発製造し、 今日ではプロユーザーを対象としたタクティカルマーケットだけでなく、狩猟用や自衛用のシビリアンマーケットの民間銃器使用者を含む幅広いユーザーによって、様々な環境下でレーザーサイトが利用されている。

H&K MP5A3 / SUREFIRE Laser Sight

▲H&K社製MP5A3サブマシンガンに装着された米国レーザープロダクツ社製(現シュアファイア社)の赤色可視光レーザーサイト(出力5mW)。 今日、タクティカルライトの市場において勇名を馳せるシュアファイア社だが、その前身であるレーザープロダクツ社は、 元々レーザーデバイスを専門とする新興ガンアクセサリーメーカーとして設立された。 これはレーザーサイトが登場して間もない1980年代後半に製造されたモデルで、当時産業用レーザーとして一般的だった ガス(気体)レーザーの一種であるHe-Ne(ヘリウム・ネオン)レーザー発振器を内蔵している。 He-Neレーザーは、真空容器内にヘリウムガスとネオンガスを封入したガラス製のレーザー細管によって、 レーザー光を得ることから、全長約30cm・重量約1.2kg(マウントを含む)の大きさをもち、 小型軽量な半導体レーザーが主流の現在のレーザーサイトよりも遥かに大型で重量があった。電源として再充電可能な専用のニカドバッテリーを用いる。 大型で重量があり、装着可能な銃種が限定されることから、米国の法執行関係機関や警察SWATを始めとして、極一部の特殊部隊によって 採用されるのみで、タクティカルマーケットにおけるレーザーサイトの普及は限定的なものであった。

H&K MP5A5 / SUREFIRE L72 Laser Sight

▲レーザープロダクツ(現シュアファイア)社製のモデルL72レーザーサイトモジュールを搭載したH&K社製MP5A5サブマシンガン。 L72レーザーサイトモジュールは、レーザープロダクツ社が1990年代後半から製造を開始した赤色可視光レーザーサイトである。 レーザー発振器を無加工で取り外し可能なモジュール式のコンポーネントにすることで、同社がラインアップするウェポンライトシステムと 組み合わせにより、ライフルやサブマシンガン、ハンドガンなど様々な銃種でレーザーサイトの運用を可能とした画期的な製品であった。

H&K MP5A3 / SUREFIRE L72 Laser Sight

▲CR123Aリチウムバッテリー1本(出力電圧3V)から作動するL72レーザーサイトモジュールは、従来の大型のレーザーサイトのデメリットを払拭した小型軽量な半導体レーザー発振器を採用しており、 その軽便さから同社のウェポンライトシステムと併せて世界各国の対テロ特殊部隊や警察SWATに採用され、現代のタクティカルマーケットにおけるレーザーサイトの普及に先鞭を着けた代表的な製品だ。 可視光レーザーを照射するL72は、ナイトビジョンデバイス(暗視装置)と併用することを前提とした不可視光のIR(赤外線)レーザー照射機能をもったL75と共に、共通規格を有した同社の旧世代ウェポンライトシステムが更新される2000年代中頃まで製造された。

Beretta M92FS / SUREFIRE L72 Laser Sight

▲ウェポンライト用マウントを介してL72レーザーサイトモジュールを装着したベレッタ92FSオートマチックピストル。 レーザー発振器をシュアファイア社のウェポンライトシリーズと共通のモジュール式コンポーネントにしたことで、 既存のウェポンライトで運用中のランプモジュールと換装することにより、従来のガスレーザーでは困難であったハンドガンでのレーザーサイトモジュールの運用が実用的なものとなった。 ウェポンライトシステムの規格と共通化を図ったことで、レーザーサイトモジュールは作戦環境に応じて容易に着脱が可能となり、メンテナンス性を含めたユーザビリティも大幅に向上している。

H&K MPSFA3 / SUREFIRE L72 Laser Sight

▲20mmレールに対応したウェポンマウントボディを介し、SUREFIRE社製M63ピカティニーレール・フォアエンドにL72レーザーサイトモジュールを装着したH&K社製MP5SFA3。 MP5SF(Single-Fire)は、FBIタイプの2ポジション・トリガーグループ・ハウジングを搭載し、サブマシンガンとして連射機能を有するMP5から連射機能を除いたLE(法執行機関)向けの単射仕様だ。 主に警察戦術部隊(PTU)をはじめとして、過剰殺傷能力の問題や法令上の制約から全自動火器を装備できない戦術部隊において運用されている。

H&K MP5A3 / SUREFIRE L72 Laser Sight

レーザープロダクツ社製L72レーザーサイトモジュールをはじめとした半導体レーザー式のレーザーサイトデバイスは、その機能性の高さから1990年代後半には第一線の対テロ特殊部隊や警察SWATチームでの採用が相次いだ。 しかし、旧来のガスレーザー方式と比較すれば安価となったものの、依然として特殊部隊などのプロユーザー向けの高級製品が大多数であったことから、 市場での流通価格は押し並べて安くはなく(当時、レーザープロダクツ社製L72レーザーサイトモジュールの定価は1,000米ドル前後)、特に費用対効果の面で民間の銃器使用者へのレーザーサイトデバイスの普及は限定的なものであった。 2000年代以降、半導体レーザーの技術革新により、レーザー発振器と電源は極限まで小型・軽量化され、さらに量産性の高さによる低価格化が進んだことで既存の大光量ウェポンライトとレーザーサイト機能のコンビネーションを容易にした。 生産性の向上に伴い、既存の大手ガンアクセサリーメーカーに加え、特に銃器大国の米国を中心として新興メーカーによるレーザーサイトデバイスの開発供給が盛んとなった。 結果として2000年代中頃には、実戦に耐える信頼性と機能性を求めるプロユーザーだけでなく、民間の銃器使用者も対象とした安価な製品を含め、多種多様なタイプのレーザーサイトデバイスが市場に普及することとなる。

ITI M6X タクティカルレーザーイルミネーター

▲2000年代後半に製造された米国インサイトテクノロジー(Insight Technology, Inc:ITI)社製のM6Xタクティカル・レーザーイルミネーターを装着したSIG SAUER P226オートマチックピストル。 2000年代前半、ガンアクセサリーの装着に対応したピカティニー規格20mmレールシステムが市場のデファクトスタンダードとして定着したことを受け、 銃種ごとに専用マウントを備えた旧来のウェポンライトシステムに代わり、共通のレールシステムに対応したウェポンライトシステムが台頭した。 この潮流の中、旧来のウェポンライトシステムにおいて業界大手となっていたシュアファイア社は、レールシステム対応の次世代ライフルマウント用ウェポンライトシステムの開発には注力していたものの、ハンドガン用ウェポンライトの開発では遅れをとっていた。 一方、米軍に大量採用されたAN/PEQ-2 ITPIAL(Infrared Target Pointer/Illuminator/Aiming Light)などの高性能軍用イルミネーターの開発を担当した米国の銃器用光学機器メーカーの大手であるITIは、 1990年代前半には米国特殊作戦軍(United States Special Operations Command : USSOCOM)の要請を受けて開発された特殊作戦用攻撃型ハンドガンであるH&K社製 Mark 23セミオートマチックピストル向け複合型イルミネーター“Laser Aiming Module:LAM(米軍での制式名称はAN/PEQ-6)”を開発しており、ハンドガン向けイルミネーターの開発において一定の技術的優位性とバトルプルーフを有していた。 1990年代はグリップフレームに独自規格のアクセサリースロットを備えたH&K社製Mark 23や派生型モデルであるUSP向けウェポンライト(M2 UTL)の製造を継続していたITIであるが、 米軍の軍用ライフルから始まった20mmレールシステムの世界的な普及に伴い、2000年代以降に開発された軍・警察向けハンドガンのフレームにもレールシステムの標準装備が趨勢となった。 これを受け、ITIは早くも20mmレールシステムに対応したハンドガン用ウェポンライトとしてM3シリーズを開発した。

ITI M6X タクティカルレーザーイルミネーター

M3は高強度なシンセティック素材の小型・軽量な本体に、内蔵したCR123Aリチウムバッテリー2本で作動する高輝度キセノンバルブ式ランプモジュールを搭載したモデルである。 旧来の銃種ごとに用意されていた専用マウント式ウェポンライトとは異なり、20mmレールシステムを備える銃種であればハンドガンに限らず、基本的には自由にウェポンライトの装着ができるという大きな利点を誇っていた。 さらにM3シリーズは成型の容易なシンセティック素材を多用したことから、価格も金属製専用マウントを備えた旧来のハンドガン用ウェポンライトに比べて安く、各国の対テロ特殊部隊や警察SWATチームに広く普及した。 その後、M3シリーズの本体下部に小型の半導体レーザー式レーザーサイトモジュールを付加したM6シリーズが登場し、さらにM3/M6に改良を加えたM3X/M6Xが開発されている。

SUREFIER(シュアファイア)X300 タクティカルウェポンライト

▲米国SUREFIRE社製のX300タクティカルウェポンライトを装着したBeretta 92FS Vertecオートマチックピストル。 X300シリーズは、同社の先発モデルであるX200シリーズの後継モデルとして2007年に発表された。 20mmレールシステムへの装着に対応し、LEDを光源とした同社初の本格的ハンドガン用小型ウェポンライトであった従来のX200シリーズは、 集光レンズの形状ごとにスポット光が特徴のX200A、拡散光が特徴のX200Bがラインナップされていたが、 後継モデルであるX300では照射光の違いによるA/Bの区分が廃止され、一般的なウェポンライトと同じく1種類に統一された。 また、照度もX200が光束65ルーメンであったのに対して、X300では光束110ルーメンに向上し、 後発の販売ロットでは内蔵LEDが最新モデルに換装され、光束170ルーメンに向上されている。

SUREFIER(シュアファイア)X400 タクティカルウェポンライト

▲米国SUREFIRE社製のX400タクティカルウェポンライトを装着したH&K HK45オートマチックピストル。 ハンドガン用小型ウェポンライトとレーザーイルミネーターの組み合わせにより、タクティカルマーケットでの成功を収めたITI社製M6シリーズに倣い、 2009年に発表されたX400は、SUREFIRE社が大出力LEDウェポンライトとして先発で販売していたX300に小型の半導体レーザー式レーザーイルミネーターを追加したモデルである。 内蔵LEDの照度は販売初期のモデルでは光束110ルーメン、後発の販売ロットでは内蔵LEDが最新モデルに換装され、照度が光束170ルーメンまで向上されている。 その後も内蔵LEDモジュールの高輝度化や省燃費化による技術革新に伴い、基本的な本体デザインや電源出力を保ったまま順次段階的に照度の向上を図り、 2020年時点ではX300/X400シリーズ共に、開発当初の10倍近い照度である光束1,000ルーメンの大出力化を実現している。

SUREFIER(シュアファイア)X400 タクティカルウェポンライト

▲5.56x45mm NATO弾薬に準拠したH&K社製HK416アサルトライフルを携行する2010年代前半のPTU(警察戦術部隊)所属オペレーター。 ルハンドガードの20mmレールに装着されたSUREFIRE社製X400ウェポンライトのスイッチ部分は、同社のXシリーズウェポンライトに対応した共通アクセサリーであるXT07ウェポンライトスイッチに換装されている。 XT07はハンドガン用に基本設計されたXシリーズウェポンライトをライフルやサブマシンガンなどのロングガンで運用するためのリモート式デュアルスイッチアッセンブリーであり、 付属の7インチ長リモートスイッチは20mmレールに直接固定することが可能な構造だ。 さらに射撃姿勢の自由度を確保する目的とリモートスイッチの断線故障などのトラブルに備え、 本体側にも従来どおりのシーソー式スイッチと保管時などの不意の点灯・放電を防止するためのロックアウト・トグルスイッチを設けている点が特徴であり、実戦における信頼性を確保している。

主要装備